日本は、1964年の東京オリンピック、1972年の札幌冬季オリンピック、そして1998年の長野冬季オリンピックなど、記憶に深く残るオリンピックを開催してきた。数ヶ月後に東京での2回目のオリンピック開催を控え、日本は「ソフトパワー」を駆使した超近代的な姿を世界に発信しようとしている。
任天堂、ソニー、カプコン、セガなど業界での歴史も長く世界にその名を轟かせる有名企業を抱える日本は、ビデオゲーム産業でも世界のリーダー的地位を保っているが、つい最近まで解決されなかった法律上の問題があったため、ゲーム界の最新トレンドであるeスポーツでは遅れを取った。しかし、来たるIntel World Openがその転機になるかも知れない。
Intel World Openとは
2019年9月11日に発表されたIntel World Openは、2020年東京オリンピックのプリイベントとしてeスポーツを導入する目的で国際オリンピック委員会とインテルが協力して実現させたものだ。IntelのeスポーツパートナーであるESLが誰でも参加できるオンラインの予選を組織し、ファイナル戦は2020年7月22日から24日まで東京のZepp DiverCityで行われる。
あらかじめ選抜されたオーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、英国、米国、そして開催国である日本は、自動的にライブ最終戦に参加できる。オリンピックは24日に始まるので、eスポーツがメインステージで競技されるのを見たいと思っている観客にとっては最高の競技セグエになる。
競技ゲームは『ロケットリーグ』と『ストリートファイターV』で、賞金プールはなんと50万米ドルだ。インテルのマーク・スポトニック(Mark Subotnick)氏は、『ロケットリーグ』と『ストリートファイター V』が選ばれた理由として、この二つのタイトルは「平均的な消費者や観衆が見て何が行われているかを理解できる。残念ながらeスポーツでは必ずしも常にそういう状態を期待できない。その意味で、この両パートナーと協力するのは妥当だと思う」と言っている。
Eスポーツの成長を阻む国内の壁
Intel World Openの詳細が発表された時、カプコンの『ストリートファイター』の上級プロデューサーである小野義徳氏はツィッターで自らの興奮を表現し、世界のeスポーツ産業がそれに注目した。翌日には日本がこうしたイベントの開催国となることの重要性や日本がeスポーツを取り込み急激な伸びを見せている世界規模の産業の仲間入りするべきであること[2019年からの業界成長に関する社内リンクまたはNewzoo レポートのリンク]を述べた記事が発表された。
最近の『ジャパンタイムズ』のオプ・エドが日本のeスポーツについて「賞金に上限を設けるような時代遅れの規制のせいで、日本のeスポーツ環境は活気がなく、そのためトレーニングや競技会に向けた動機づけもない」とコメントしている。
これまで、eスポーツに関する特定のバリアを取り外すのは、日本における公認プロライセンスの発行機関である、日本eスポーツ連合(以下“JeSU“)の役目の一部だった。JeSUはeスポーツプレイヤーに専門職としての地位を与える公認ライセンスを発行することで、eスポーツが賭博と見なされないようにし、賞金上限の問題を回避しようとしている。
JeSUの土台作りのお陰で、ゲームに対する国民の態度は軟化したものの、eスポーツイベント開催に関してはまだまだ不透明な問題がいくつも横たわっている。日本が開催国となることで、世界からの参加者のために国際オリンピック委員会に賞金を裁可してもらうことは、これらのバリアを解消する賢明な方法であり、法的なレベルで賭博金規制からeスポーツを切り離す動きを後押ししてくれるかも知れない。
ソフトパワーの強化
ソフトパワーの王者であることを世界に知らしめるのが2020年オリンピックの一つの大きな目標なら、日本は過去のオリンピック開催国の実力に匹敵するかそれを超える力を示さなければならない。先回の冬季オリンピックは2018年に韓国の平昌で開催されたが、韓国はeスポーツにおいて世界的に有名な経歴を誇っている。
これらのオリンピックをきっかけにIOCとIntelのイベントパートナーシップが始まり、「Intel Extreme Masters平昌大会」のブランド名がついた。このイベントで韓国は、長年その腕前を自慢してきたタイトル、『スタークラフト2』のプレミアム競技会を開催する機会を得て、eスポーツの実力を見せつけた。
IEM は2月5日から7日までの3日以上続き、賞金プールは15万米ドルで、その才能が世界的に知られているカナダのSasha『Scarlett』Hostynも参加し、ただ一人の女性競技者として、韓国のKim『sOs』Yoo Jinに逆転勝利し1位の座を獲得した。
IEM 平昌大会が成功したことで、韓国はeスポーツのメッカとしての地位を確立し、国内には情報に通じた観衆がおり、通信インフラストラクチャの接続が優れていること、そして、eスポーツ空間のリーダーとして務める意欲を示すことができた。
PCゲームは韓国内で以前から楽しまれてきた娯楽であり、eスポーツシーンが最初に発展したのも納得が行く。日本も人気の高いコンソール向けのeスポーツタイトルに目を向ければ、それはできないことではない。
日本がIntel World Open の開催国となり、韓国が『スタークラフト』や『リーグオブレジェンド』や『オーバーウォッチ』などのタイトルに対して見せているように、『ストリートファイター』や『ロケットリーグ』などのゲームへの熱意を示せば、日本はeスポーツのそのタイトル分野においては自らをリーダーと名乗ることもできるだろう。
Eスポーツに注目する国になることの有益性
Intel World Openなどのグローバルイベントを開催し成功を収め、コンソール中心のeスポーツへのアプローチに傾倒することは、日本にとっても有益だ。良いイメージがメディアで取り上げられれば地方あるいは全国レベルの競技会への興味も高まり、イベント計画や促進のエコシステムが構築される。参加者が増えれば、プロプレイヤーのライセンス申請数の管理が難しくなり、賞金額の制限も緩和されることになるだろう。セミプロとアマチュアの競技者がプロと認められるには色々と問題も出てくると思われる。
また、プレイや競技の機会が増えれば、eスポーツを中心にした観光産業も増えるだろう。全国でeスポーツイベントや施設をサポートできるテクノロジーを構築するための理由づけができるので、インフラストラクチャの新鮮さとイノベーションが維持され、それにより日本はゲーミングのあらゆる面で他を圧倒できるソフトパワーを見せつけられる。
この夏のオリンピックが終われば、eスポーツ競技会なら日本へ行こうと言われるようになるかも知れない。
Gamma Law はサンフランシスコに拠点を置き、最先端のビジネスセクターのお客様をサポートしています。複雑でダイナミックなビジネス環境で成功するために必要なサポートを提供し、イノベーションを促進し、国内外におけるビジネス目標達成のお手伝いをいたします。お客様のビジネスニーズに関するご検討は、ぜひ弊社にご連絡ください。