近年、著名人によるNFTの推奨や投資が話題になっています。しかし、このトレンドは、NFTのミンティングとパブリシティ権をめぐるいくつかの法的問題を提起しています。本稿ではパブリシティ権に焦点を当て、著名人の肖像、画像、名前、またはパーソナリティに基づくNFTを作成する際に、ミンターが念頭に置くべき戦略について解説します。
背景
パブリシティ権については、その法的定義とニュアンスを理解することが重要です。パブリシティ権(人格権)とは、個人が自分の名前、画像、肖像(NIL)、その他のアイデンティティーの商業的利用をコントロールする権利を指します。すなわち、個人が自分のイメージや肖像を、許可や代償なしに、他人に商業的に利用されないようにする権利です。パブリシティ権は法域によって異なりますが、米国の約半数の州では、個人のパブリシティ権の範囲、その権利の譲渡可否、パブリシティ権侵害に対する法定損害賠償などを規定し、明確にパブリシティ権を認めています。また、中にはプライバシーに関するコモンロー上の権利や不正競争を禁止する法律のように、保護の一部とみなしている州もあります。
カリフォルニア州は、パブリシティ権に関して最も包括的な法律を制定しています。カリフォルニア州では、セレブリティや著名人がパブリシティ権侵害を訴え、勝訴するには、以下の4つの要素を証明する必要があります。
- 被告が原告のアイデンティティーを使用したこと
- 被告が原告の氏名又は肖像を被告の商業上の利益またはその他の利益のために流用したこと
- 原告の同意なく流用したこと
- その結果、原告に損害を与えたこと
上記のテストは、本質的に、個人のアイデンティティー所有権の利益を保護することを目的としています。個人のアイデンティティーが保護されるべき要素には、名前、肖像、音声、署名、およびその他の独自に識別可能な特性が含まれます。
ライセンシング
NFTミンターが個人の肖像を使用するにあたって、明確な許可を得られなかった場合、その個人のペルソナのいかなる使用の中止を求める停止命令を受けることがあります。また、金銭的補償を要求したり、法的措置を警告する書簡が送られる場合もあります。無断で有名人をNFTに描写したNFTミンターは、和解交渉の機会もなく訴えられる可能性が非常に高いのです。パブリシティ権の侵害が認められた場合、多額の金銭的罰則が科される可能性があります。さらに、州によっては、NFTプラットフォーム・マーケットプレイスは、侵害するNFTの販売を許可したことによる寄与責任を問われる可能性があります。NFTミンターがプラットフォームを利用して侵害NFTを作成、ミンティング、販売した場合、作成者はサイトの利用規約に従って補償する義務を負う可能性があります。
言論の自由
パブリシティ権を検証する際に生じる判断基準の中に、著名人によるNFTの推奨が言論の自由を構成するかどうかということがあります。長年にわたる何百もの事例において、パブリシティ権の主張が憲法修正第1条にどのように関連するかが検討されてきました。これらの裁判の多くでは、主張された侵害が商業的利用を目的としたものかどうかが重要な論点となっています。自己のペルソナをコントロールする権利は、独立した報道機関や芸術・娯楽における自由表現を確保するために必要な米国の守るべき5つの自由(言論、宗教、報道、集会、政府への請願の権利)に取って代わるものではありません。
パブリシティ権をめぐった訴訟が多いカリフォルニア州では、関連法令は、「広告または販売を目的とした(中略)製品、商品、または物品における」自身のNILの無許可の使用に対してのみ保護するものす。しかし、ある作品が「商業的」であるかどうかの判断は、司法が明確にしていないため、より困難になっています。実際、個人の同意なしに非商業的なNFTで個人を描写することが、その個人のパブリシティ権の侵害にあたるのか、それとも保護された言論の自由とみなされるべきなのか、まだ明確な判断はなされていません。裁判所が確定的な判決を下すまでは、NFTに対するパブリシティ権の主張は、引き続きケースバイケースで判断されることになります。
パブリシティ権訴訟を回避するためのベストプラクティス
NFTを商業目的で使用する予定のプロジェクトや企業は、有名人や個人のNILに基づくNFTを作成する前に、以下のような厳格なポリシーを導入し、自らを保護する必要があります。
- 許可またはライセンスを取得する
NFTに実在の人物(生存、死去、あるいは有名人、一般人を問わず)を描写することを意図するミンターにとって、最も安全な方法は、NFTで使用しようとする人物のペルソナをライセンス取得することです。コンテンツのライセンス契約は一般的に行われていますが、その手続きには時間と費用がかかります。また、NFTの大半は既存の画像に基づいているため、特定の画像に関する権利をライセンス取得しても良いでしょう。有害な法的リスクを最小限に抑えるため、ライセンス供与契約書の作成には弁護士を起用するのが最善です。 - 免責事項の作成
適切な免責事項を作成することで、NILクレームのリスクを最小化することができます。このような免責条項には、背景情報、使用目的、ライセンスの条件などを規定する必要があります。免責条項の作成については、知的財産とNFTを専門とする弁護士または法律事務所にご相談ください。 - 公的リソースを活用する
プライバシー侵害とみなされる危険性を低くするために、NFTは、財産記録や公的な財務情報など、一般に入手可能な記録に基づいて作成することが望ましいでしょう。こうした場合、著作権所有権および関連する要件は厳密に遵守されなければなりません。
NFTの人気が高まる中、独自のNFTを作成しようとするプロジェクトや企業は、個人のパブリシティ権の同意なき使用に伴う法的リスクについて認識しておく必要があります。また、たとえ必要なライセンスや認可を取得していても、法的保護の観点から損害賠償の対象となる場合もあるため、完全に免責されるとは限りません。したがって、NFTを市場に投入する各段階において、適格な法律専門家による法的アドバイスを受けることが強く推奨されます。
ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、最先端のビジネス分野で選ばれたクライアントをサポートする法律事務所です。複雑でダイナミックなビジネス環境において成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要なサポートをクライアントに提供しています。お客様のビジネス・ニーズについて、今すぐご相談ください。