タイムアウト! eスポーツ規制の効果的な枠組み提供に奮闘する州

タイムアウト! eスポーツ規制の効果的な枠組み提供に奮闘する州

タイムアウト! eスポーツ規制の効果的な枠組み提供に奮闘する州

1000 648 Christopher Reggie

2022年初頭の時点で、eスポーツトーナメントは、世界中の48,000のトーナメントにおいて、約10万人のプレーヤーに10億ドル以上の賞金を支払っています。プレイヤー、スポンサー、チームオーナー、トーナメント主催者、マーケティング担当者、その他の関係者が挙って自分たちの取り分を求めて殺到する中、新規および進行中のトーナメントでは、毎月平均約100万ドルの賞金が授与されています。デジタル・ゴールドラッシュの最新の波の1つとして、eスポーツは、存在しないか又は一貫性のない規則や規制、管轄権争い、緩い施行力、そして、プレーヤー、ファン、およびゲームの整合性に対する保護が不確実であることに悩まされています。

eスポーツはその規模、受容性、人気において成長を続けています。2022年のアジア競技大会ではeスポーツイベントが開催され、将来のオリンピックにもeスポーツを加えるという話も進行中です。着実なファン層の増加、正式なチーム構造の出現、更にF1レーシング、FIFA、FIBAといった伝統的なスポーツ組織との提携により、eスポーツが「本物の」スポーツとしての正当性を強固にしました。

しかし、包括的な規制がないため、事実上全てのゲームで少なくともいくつかの不正行為、悪用、犯罪や詐欺による搾取が非難されています。更に、州の規制当局が直面する課題や困難は、米国に限ったことではありません:他の西洋諸国も同様に現在まで成功をみていません。ドイツ、イタリア、スペインの規制は、煩雑で断片的であり、”極めて脆弱で操縦されやすい “と特徴づけられています。ゲーム、リーグ、トーナメントが財政的、法的、社会的な責任を果たすためには、伝統的なスポーツ規制と同様な包括的ガバナンスを採用する必要があります。

米国の州、連邦政府、或いは国際機関が主導して、eスポーツの世界にガイドラインを定め、eスポーツ選手、消費者、ゲーム所有者のためのフェアプレーと適切な保護を確保する時期が来ているのかもしれません。しかし、そのような規制を導入・実施することは、これまでにないユニークなスポーツ競技問題を提起することになります。

従来のスポーツとは異なり、eスポーツゲームは開発者やパブリッシャーによって所有されています。例えば、サッカーは誰にも所有されていないので、ユースリーグ、NCAA、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)は、ゲームやトーナメントの構成やプレイ方法を自分たちで決定することができます。一方で、ライアットゲームズ社は『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』を所有しているので、ゲームのルールやトーナメントの構造を決定する唯一の権限を持っています。もし、ライアットゲームズ社が主催者のLoLトーナメント運営方法を気に入らなければ、同社は、そのイベントでのゲームの使用について、単に同意を留保することができます。

利害関係者の課題の数と多様性、そして業界の断片化は、eスポーツの規制を目指す米国の州にとってさらなる課題となっています。こうしたことから、大会運営者による裁判管轄権買い占めを防ぐために、eスポーツイベントを開催する州間で緊密に連携することが必要となっています。しかし、このような協力は、各州がお互いをeスポーツイベントからの収入を争う競争相手とみなし、eスポーツイベントを適切に規制するよりも誘致を優先する可能性があるため、利害の対立が生じます。

2021年にネバダ州議会に提出された法案は、ステークホルダーの利害がeスポーツ規制の実施に影響を与えることを物語っています。この法案は、ボクシングや総合格闘技を監督する州のアスレチック・コミッションと同様に、eスポーツを規制する委員会を設立しようとするものでした。任天堂、アクティビジョン・ブリザード、マイクロソフト、エレクトロニック・アーツなど、ビデオゲームやeスポーツ分野の有力企業からの主な反対意見は、煩わしい規則や不必要な手数料によって、ネバダ州でイベントを開催する大会プロモーターや主催者が意欲を失ってしまうというものでした。大会プロモーターは、このような規制がない会場を選ぶだけだと述べました。結局、eスポーツを規制するという当初のビジョンを実現するものではなく、eスポーツ賭博に関してネバダ州ゲーム管理委員会に助言する委員会を設置するだけの水増し法案が成立しました。

これらの斬新な問題に対処するために、各州は「ビュッフェ形式」のアプローチをとり、世界の他地域での業界団体の規則やeスポーツ法を借りて、実行・適応可能な構成要素を選び、地元の修正条項と結びつけることが可能です。あるいは、eスポーツ統合連立機構(Esports Integrity Coalition, 又は ESIC) の不正行為やマッチフィクシングの監視方法、世界eスポーツ協会(World Esports Association, 又は WESA) のリーグやトーナメント運営のベストプラクティスに関するプレイヤーからの意見募集ポリシーなどを利用することもできます。また同様に、韓国電子スポーツ協会(KeSPA)のように、「賭博」という触れたくない部分を無視してプロのeスポーツ選手をライセンス契約し、規制することも可能です。最後に、各州は、プロ契約を1年から5年に制限し、12歳未満の選手を賞品の出る大会に参加させないなど、フランスのように発達及び経済の両面で選手を保護する法律を制定することができます。

どのようなアプローチを選ぶにせよ、効果的な州規制は、業界の将来性を左右する3つの重要分野、すなわち、プレーヤーの福祉、ゲーム性、消費者保護に焦点を当てるべきでしょう。

プレーヤーの福祉

eスポーツは若者のゲームです。プレイヤーは10代後半にピークを迎え、20代半ばで引退することが多いのです。そのような若さで頂点を目指すために、プレイヤーは10代に至るまでに週に何十時間も練習することもあります。しかし、若いプレイヤーはゲーム中毒やギャンブルに陥りやすく、更にネットいじめ、性差別、人種差別などeスポーツの現場で横行している反社会的行為に対して報告する意欲や対処能力も低い可能性があります。10代のプレイヤーの多くは、高度な交渉術や社交術に欠けており、不誠実なプロモーター、エージェント、コーチ、その他の権力者の格好の被害者となる可能性があります。従って、eスポーツの州規制は、契約、収益、手数料、労働条件、さらには精神的、身体的、性的虐待における搾取からプレイヤーを保護する必要があります。

  • 労働法 中国ほどeスポーツのトレーニングや練習を厳しく制限しようとする規制当局もないでしょう。杭州市で開催される2022年アジア競技大会には8つのeスポーツイベントが含まれているにもかかわらず、中国は18歳未満のプレイヤーのゲーム時間を夜1時間、金・土・日・祝日にのみ制限しています。この取り締まりは、ビデオゲーム中毒対策のために考案されたもので、全盛期またはそれに近い時期にあるeスポーツチームや個人のトレーニングにハンディキャップを与えています。多くのトップアスリートが30歳前に引退し、世界中のチームやプレイヤーがフルタイムで技術を磨く中、常に練習しなければならないという内外のプレッシャーは強烈です。強制力のある労働ガイドラインがなければ、チームの方針とプレイヤーの意欲が、不正行為への誘惑やプレイヤーのオーバートレーニングにつながり、身体の損傷や、メンタルヘルス、更には 薬物乱用の可能性を招く恐れがあります。
  • 賃金搾取 10代の若者がeスポーツ選手の大半を占めるのは、親元で暮らしている人しかこの業界でのキャリアを追求する余裕がないからだと批判する人もいます。トップ20のプレイヤーが数百万ドルを稼ぐこともある一方で、ある独立プロは世界最大の「大乱闘スマッシュブラザーズDX」で7位に入賞しても賞金は300ドルにも満たなかったと明かしています。エリートプレイヤーの下層では、経済状況はより悲惨となるのです。ある業界関係者が指摘するように、この層のプレイヤーは、ゲーム開発者、プロモーター、リーグ、チームの言いなりになって、「アマチュアからプロになるために、あの…泥臭いセミプロのシーンを経て」いるのです。そして、ゲームの階層が下がれば下がるほど、状況は悪くなります。

不正行為

eスポーツはマーケティング担当者、マーチャンダイザー、その他の資金力のあるパートナーを惹きつけるため、またトーナメントやリーグは、優秀な人材を獲得するために、賞金やボーナスプールに多額の資金を割り当てることができます。このように多額の賞金がかかっているため、アスリート、コーチ、チーム、ギャンブラーは、競技者の能力を超えた手段を使って競技結果を左右しようとする動機が膨らみます。その手口は、覚せい剤、改造コントローラー、aimbots、チートコードを使用してプレイヤーのスキルを向上させるものから、贈収賄やマッチフィクシングまで、多岐にわたります。各州の規制当局が真摯に対応し、その管轄下にあるゲームの健全性を維持するためには、これらの問題を強力かつ一貫して管理する必要があります。

  • ドーピング  この対策に関しては、州がわざわざ一から作る必要はないでしょう。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は、多くのオンライン及び従来のスポーツ団体で使用されている規約を作成しました。この包括的な規約には、禁止されている栄養補助食品、市販薬、違法薬物のリストが含まれています。アスリート、コーチ、トレーナー、その他チームやイベントの関係者が、禁止物質を所持したり、禁止物質の陽性反応が出た場合、段階的な処罰のメニューが用意されています。州は、WADAと協力して、禁止物質のリストや違反した場合の制裁をカスタマイズすることができます。同時に、州は違反の疑いに対する裁定が個人の権利を侵害しないようにする必要があります。疑惑が完全かつ公正に調査され、立証責任が果たされ、プレイヤーの憲法上の権利が尊重されるよう配慮しなければなりません。更にこのプロセスでは、人種、性別、その他の偏見が排除されなければいけません。
  • 操作 州は、米国を拠点とするベッティングやオフショアベッティングの監視機関と提携し、異常な疑わしい活動の兆候をチェックする必要がありますeスポーツ・データプロバイダーである Abios社 の創設者兼 CEO の オスカー・フロバーグ氏は、不正行為スキャンダルは eスポーツ の収益に打撃を与える可能性があるものの、「ほとんどのハイティアトーナメントは、不愉快な行為に対して十分な安全策を講じています。トーナメントがオフラインのLANイベントに戻ってきたため、トーナメントの主催者とそのパートナーは、不正行為の試みからゲームを保護することが容易になっています。」と述べています。同氏はまた、州が継続的な教育や先制的な取り組みを提供すれば、この種の不正行為を軽減することができると提案しています。「著名なeスポーツチームの選手の多くは若年層であり、そのためマッチフィクシングやチーティングがもたらすリスクや影響について知識がない可能性があります。手っ取り早くお金を稼いだり、チームを勝たせたりする簡単な方法のように見えることでも、プレイヤーとeスポーツ組織の双方にとって有害な結果をもたらすかもしれません。プレイヤーとチームの双方が、そのリスクと、それが短期的な報酬に見合わない理由を教育される必要があるのです。」

消費者保護

州が制定するeスポーツ規制は、ファン、加入者、カジュアルプレーヤーを保護するための措置も講じる必要があります。

  • プライバシーテレビゲームの悪影響の可能性に敏感な英国でさえ、eスポーツを国力の源泉になりうると捉え、新たなeスポーツ放送プラットフォームに400万ポンドを投資しているほどです。しかし、このプラットフォームは「AIとデータ学習の活用により、高度にパーソナライズされた視聴体験を実現する…これにより、このプロジェクトは、未来のオーディエンスが没入体験にどのように関わるかの洞察と、将来の商業化への道筋を示すことができる」と述べていますが、これはデータプライバシーに関する懸念を提起しているのです。
  • ギャンブル依存症 科学雑誌「Plos One」の研究によると、ビデオゲームの戦利品に費やす金額と、問題ギャンブル度指数(PGSI)のスコアに相関があることが判明しました。この研究では、戦利品ボックスが問題ギャンブラーの入り口や代用品として機能するとは結論付けていませんが、一部のプレイヤーのギャンブル傾向からゲームが利益を得ている可能性があることを発見しました。eスポーツのギャンブルも同じようなカテゴリーに入る可能性があります。eスポーツは、ほとんどの人には自分の許容範囲を超えた賭けの誘惑はしないかもしれませんが、それでもこの種の自己破壊的な素因を持つ人々に機会を提供するものです。英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省の調査によると、ゲームやeスポーツのストリーミングプラットフォームを含むと思われるウェブサイトは、「説得力と行動デザインの科学に基づいており、ユーザーのエンゲージメントを長引かせるように働きかけている 」ことがわかりました。これらのサイトは、プレイヤーをできるだけ長くプラットフォーム上にとどめ、彼らの好みについてより多くを学び、その情報を使ってゲーム内広告のターゲッティングを行い、自発的な購買を促進することに非常に現実的な関心を持っているのです。

結論

伝統的なスポーツ に対しては実行可能なガバナンスの枠組みが確立されているものの、eスポーツには数多くのユニークな特徴があり、効果的な統一法、規制、ガバナンスのためには、より微妙でバランスの取れたアプローチが必要です。

準規制機関が立ち上げられましたが、それらはeスポーツが直面する公平性と保護に関する問題の一部にしか対応しておらず、 一般的にそれを施行するための正当性、賛同、範囲、および力を欠いています。さらに、利己的で不十分な規制の取り組みは、eスポーツ競技の断片化を招き、実行可能な総合基準や慣行を作る努力を妨げています。

総括的な規制の枠組みを確立するためには、利害関係者が個々の利益や優先順位を脇に置き、より大きな利益に向かって集団的に取り組むことができる、協調的かつ協力的なアプローチが必要となります。これまでのeスポーツ業界の規模と成長を考えると、このような前向きで無欲な行動を成功させることで得られる報酬はとてつもなく大きいものになるでしょう。

経験豊富なeスポーツ専門弁護士に相談することで、プレイヤー、開発者、その他の関係者が適用法を遵守し、複雑で絶えず進化するeスポーツの法規制の状況をナビゲートすることができます。

ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、最先端のビジネス分野で選ばれたクライアントをサポートする法律事務所です。複雑でダイナミックなビジネス環境において成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要なサポートをクライアントに提供しています。お客様のビジネス・ニーズについて、今すぐご相談ください。

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Christopher Reggie

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