世界におけるメタバースの価値は、2024年には8000億ドルに達すると予想されています。これは、2020年の480億ドルから16倍以上の成長です。メタバースは、商標権の行使、ブランディングやマーケティング取引、コンテンツ提携やコラボレーション、市場開拓、顧客の多様化など、多くのビジネスチャンスと法的課題をもたらします。既存企業や新興企業を問わず、巨大なメタバースでの事業や独自のメタバース・プラットフォームの構築を計画する企業は、いくつかの潜在的なブランド使用や商標に関する問題に注意する必要があります。
メタバースはブランドとトレードマークで成り立っている
ブランドオーナーは、この新しいデジタル環境であるメタバースで知的財産権(IP)を行使するため、新規参入企業は、商標権について熟知しておく必要があります。多くの人が、メタバースは自社の製品・サービスを宣伝するための無限市場と楽観的に考えています。先見性のあるブランドオーナーは、仮想オンライン用にダウンロード可能であるt仮想商品、それらを扱う小売店、デジタルコレクションサービスなど、メタバース内のみでアクセス可能な商品・サービスのロゴマークや商標の登録に踏み切っています。例えば、Nikeは、米国特許商標庁(USPTO)に6件以上の商標出願をしており、メタバースにおけるバーチャルシューズやアパレルの販売を意図していることがうかがえます。特許出願には、Nikeのスウッシュ(swoosh)ロゴ、「Just Do It」スローガン、エアジョーダンのデザインなどが含まれています。さらに、バレンシアガやグッチなどの高級ブランドは、メタバースを利用して現実世界の消費者と結びつき、収益を増加させる方法を積極的に検証しています。
このようなメタバースの多様な商業効果を規制することは困難であり、メタバースへの潜在的参加者は、どの権利がどのステークホルダーに属するかを追うことが困難となるかもしれません。デジタルブランドの普及とメタバースが一体化した結果、問題点や曖昧さが生まれることが避けられないでしょう。従って、ビデオゲーム、デジタルメディア、AR/VR、暗号、その他の新興技術分野で事業を行う企業は、自社の資産・知財を保護しつつ、他社の資産への侵害を回避するための包括的計画が必要となるのです。そのためには、ビジネス戦略、パートナーシップ、権利譲渡、視聴者保護、パブリシティ、製品、サービス等に適用される法的事項や規制を理解している専門家と提携することが必須となります。
法的考察
ゲーム、デジタルメディア、暗号/ブロックチェーン、その他の技術系企業は、該当する法的事項に特に注意する必要があります。
- 商標の検索及び登録 – これまでWeb2.0に注力してきたテクノロジーやデジタルメディア企業は、マーク・ザッカーバーグ氏のFacebook(現メタ)に倣い、メタバースファーストの組織としてリブランディングすることを検討してみてはいかがでしょうか。そのためには、新しい商標を登録する必要があります。しかし、このように新たな視点に立ったブランディングを行うだけでも、さまざまな問題が生じてきます。例えば、「メタ」や「メタバース」という人気の単語に乗じて、メタバース・ゲームでスポーツ・ブランドを宣伝する企業は、厳しい競争に直面したり、または既に登録済みの商標や著作権を侵害してしまうかもしれません。800件以上がすでに「メタ」を単語や接頭辞として使用しており、2021年にはさらに100件以上が出願されています。米国特許商標庁(USPTO)は、「BRANDS IN THE METAVERSE」や「SPORTS IN THE METAVERSE」などの商標出願を、一般的すぎる、あるいは記述的すぎるとして、無効と判断するかもしれません。このような問題については、弁理士や米国特許弁護士に相談されることをお勧めします。
- ブランディング – メタバースでは、ブランド名の使用や誤用が物理的世界以上に横行するでしょう。これは、世界的な有名ブランドが、物理的な消費者向け製品ラインに加えて、バーチャルグッズの商標を登録したのが主な理由です。ブランドオーナーがその権利を行使する有効的メカニズムが存在することを、独自のメタバース構築を目指すテクノロジー企業は認識する必要があります。その結果、メタバース・プロバイダーは、ユーザー生成コンテンツの監視、違反が疑われる行為の調査、正当な商標権者から提出される停止命令への対応、および模倣品提供の削除のための、専門スタッフを雇う必要があるかもしれません。他社ブランドに自社商標が侵害された場合、責任あるプラットフォームは、積極的に通知を提出し苦情を申し立てるための専用メカニズムを提供するかもしれません。
経験豊富な弁理士や特許弁護士のアドバイスを受けることで、企業は知的財産侵害を取り締まる責任と、侵害の当事者とならないよう自社を守る方法について知ることができます。二次的責任を軽減するためには、包括的で微妙なニュアンスを持つ知的財産ポリシーが非常に重要となるのです。健全な知的財産ポリシーをもたないメタバースサービスプロバイダーは、メタバースの一角で発生する商標侵害やブランドの不正使用に対して責任を問われる可能性があります。
- ライセンシング – 多くのブランド・商標所有者が、メタバースから収益化する方法を試行錯誤しています。自社商品やサービスのプロモーションを望む人もいれば、他社ブランドや商標の集客力を利用しようとする人もいます。どのようなビジネスモデルであれ、商業的メタバース参加者及びプロバイダーは、適切な商標ライセンス契約を交渉し、文書化する必要があります。例えば、メタバースユーザーは、様々なデジタル製品を使ってアバターを作成することができます。このアバター作成機能により、プレイヤーは仮想世界の架空の人物に「リアルに」なりきることができるのです。このような場合、適切な商標ライセンスがなければ、商標権侵害で訴えられる可能性もあります。また、特定のデジタル製品に関する権利は付与されたものの、その権利を将来的に行使できない状況に陥る可能性もあります。ライセンス契約をする際は、その範囲、期間、領域、独占権、サブライセンス、ロイヤルティー率等の条項を理解する必要があります。
メタバースは、バーチャル商品やサービスを通じて新規オーディエンスを探求し、ブランドロイヤリティを高めようとするプロバイダー、マーケッター、ブランドオーナーにビジネスチャンスと課題の両方を提供します。多くのブランドがメタバース・マーケティング戦略を推進する中、健全な商標戦略を策定することは、全ての利害関係者にとって最大限の保護と柔軟性を確保することにつながります。また、強力な商標戦略は、新興技術がメタバースにおいて既存のIP(ブランド)を収益化する際にも有効です。例えば、ビデオゲーム社は、既存のゲーム内資産の人気ブランドを収益化し、メタバース内でライセンス供与することができます。
新興技術を専門とする弁理士、米国特許弁護士は、他の法的問題と共に、メタバースにおいて既存の商標から収益化できる方法について指導することができます。
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