パン・パシフィック計画: 日本企業のための米国市場進出ガイド

パン・パシフィック計画: 日本企業のための米国市場進出ガイド

パン・パシフィック計画: 日本企業のための米国市場進出ガイド

1000 648 Yusuke Hisashi

デジタル経済の急速な発展は、国際ビジネスに大きな影響を与えています。その一つの傾向として注目されるのは、日本企業の間で、米国の法人設立についての関心が高まっていることです。しかし、このような異文化へのビジネスの進出においては、法律面だけでなく、文化的な背景についても理解する必要があります。

米国に法人を設立する際には、連邦の規制のみならず、それぞれの州独自の規制を考慮する必要があります。また、Web3技術を活用する場合には、米国の規制だけでなく、それに合わせたビジネス慣行に適応する必要があります。ブロックチェーン、分散型金融(DeFi)、メタバース等が台頭したことで、諸外国の法制度についての理解も求められています。

本稿では、これらの検討事項を深く掘り下げ、米国市場の進出を考えている日本企業に向けて実践的なアドバイスを提供いたします。

事業構造

まず、法人形態の選択です。どの種類の法人にするかによって、会社の運営構造、納税義務、法的責任が大きく異なります。日本企業によく選択される事業形態は、Cコーポレーション(C-corporation)とLLCであり、それぞれに利点と注意点があります。

Cコーポレーションは、日本の株式会社に類似した形態であり、資金調達をするために株式を発行することができます。Cコーポレーションは、会社の債務や負債に対する株主の個人責任を免除する仕組みになっていますが、二重課税の対象となります。つまり、法人自体がその利益に対して税金を支払い、さらに株主も受け取った配当金に対して税金を支払うということです。

一方、LLCは日本の合同会社と類似しており、経営や利益分配の面でより多くの選択肢があります。また、LLCの場合にはパススルー課税となり、法人の段階では課税がなく、オーナーの段階にのみ課税がなされます。このように、LLCは税制上の大きなメリットがあるのですが、日本法上、LLCは外国法人とみなされ、損益通算の対象外となってしまいます。つまり、これは日本の親会社がパススルー課税の恩恵を受けられないことを意味します。

以上の点から、日本企業が米国に進出する際には、Cコーポレーションを選択することが多くなっています。

管轄区域の選択

一般的に、法人を設立する州は、事業活動が物理的に行われる州を選ぶ場合か、または、会社法上多くの利点があると考えられている州のどちらかを選ぶことになります。例えば、デラウェア州は、法人設立手続が簡単であることや、多くの会社法関連訴訟がなされており、予測可能性が立てやすいという点から、多くの企業がデラウェア州を設立州としています。

なお、法人が実際の事業が行われる州とは異なる州での法人設立を選択する場合、例えば、デラウェア州で設立し、他の複数の州で事業を展開する場合、その事業が行われる州でも「外国法人」として登録をする必要があります。

外国法人として登録する場合、追加手続と手数料が必要となり、当該法人は両州の法律を遵守しなければなりません。例えば、デラウェア州で設立された法人がカリフォルニア州で事業を行う場合は、コーポレー ト・ガバナンスの問題についてはデラウェア州法に準拠し、カリフォルニア州での事業運営に関してはカリフォルニア州法に従う必要があります。

米国で法人設立の州を決定するには、事業の性質、法的安定性、税務上の影響、各州の行政要件など、様々な要素を考慮する 必要があります。そのため、設立州の決定にあたっては、専門家の助言を得て、自社の戦略的目標と経営上のニーズに合致した決定を下す必要があります。

ビジネスライセンス

米国では、連邦政府、州政府、地方政府による、それぞれの事業に関する複雑なライセンスのシステムがあります。そのため、事業内容によっては、複数の政府レベルのライセンスを取得する必要があります。ライセンスの要件は、事業の性質や設立州によって異なりますが、例えば、放送メディア、航空、州間輸送、アルコール飲料、銃器、野生生物の販売などの特定の業種には、連邦政府の許可が必要です。

また、州レベルでは、ほとんどの事業の運営にあたり、一般的なビジネスライセンスの取得が必要ですが、特定の職業や業界では、特定の州のライセンスを取得しなければなりません。例えば、医療サービス、建設業、不動産業などがその一例です。店舗や事務所など、物理的な拠点を持つビジネスの場合、郡や市のライセンスが必要な場合もあります。これには、ゾーニング許可、保健所許可、職業許可などが含まれます。海外のweb3やデジタル・メディア関連事業もまた、複雑に変化する米国の規制環境に直面しています。

このように、取得をしなければいけないライセンスが、事業内容、各州によって異なるため、米国進出を計画している日本企業にとって、事業設立を予定している州のライセンスについて調べておくことは重要です。

プライバシーと消費者保護

日本の個人情報保護法とは異なり、米国には現在、連邦レベルの統一的なプライバシー法は存在せず、プライバシー保護は各州法によって規制されています。特に重要な法律の一つは、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)であり、カリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)により改正され、2023年1月から施行されています。ただし、CCPAとCPRAは、カリフォルニア州住民の個人情報を収集する事業者のみに適用され、①年間総売上が2,500万米ドルを超えるか、②カリフォルニア州の住民10万件以上の個人情報を購入、販売、または共有するか、③これらの個人情報の売却または共有から年間収入の50%以上を得ている事業者のみが適用対象となります。

なお、バージニア州コロラド州コネチカット州など、他のいくつかの州でも近年プライバシー法が制定されています。ユタ州でも同様の法律が年内に施行される見込みです。

ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、複雑な最先端のビジネス分野において、厳選されたクライアントをサポートするWeb3企業です。ダイナミックなビジネス環境で成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要な法務サービスを提供いたします。貴社のビジネスニーズについて、今すぐご相談ください

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Yusuke Hisashi

All stories by: Yusuke Hisashi