非代替性トークン(NFT)は、eスポーツ業界に革命を起こすと言われています。現在、eスポーツにおけるNFTの用途としては、物理的なトーナメント・トロフィーの代わりにNFTを授与することが挙げられますが、これはオンライン大会が普及している現在、より効率的なソリューションと言えます。また、100 Thieves EsportsやSimplicity Esportsなどのゲームパブリッシャーやeスポーツ団体は、デジタルプレイヤーカードやコレクタブル・トレーディングカードの形で、NFTを消費者向け商品に組み込んでいます。これらのアプリケーションは、eスポーツにおけるNFTブームの単なるになる始まりに過ぎないかもしれませんが、現在のところ、これに関連する法的規制問題についての情報はほとんどありません。本稿では、このようなエキサイティングな状況下でのNFT使用に関連する重要な法的事項を検討します。
権利の範囲
NFTは通常、画像、サウンドバイト、ビデオクリップなどの特定のデジタル資産に付随するライセンスの一種です。ほとんどの場合、オリジナルアートやその他の資産の著作権は、物理的資産の所有者が保持しています。NFTを購入したからといって、自動的にデジタルメディアファイル自体の権利が得られるわけではないことを理解しておく必要があります。トークンのみが譲渡されるのです。そのため、eスポーツのハイライトをNFTとして記録したい企業は、フェアユースドクトリンやその他の例外が適用される場合を除き、権利者からデジタル資産に関する権利を取得する必要があります。
ライセンス問題
eスポーツNFTの場合、複数の団体が取引に関与する可能性があるため、知的財産権(IP)のライセンシングが複雑になることがあります。これには、プレイヤー、チーム、リーグ、ゲームパブリッシャー、トーナメントプロモーターなどが含まれますが、これらに限定されません。eスポーツに基づくNFTのクリエイターは、自分が所有していない知的財産や創造的財産についても適切なライセンスを取得することで、自らを守る必要があります。第三者の知的財産を無断で採用した(または単に利用した)NFTは、訴訟の対象となります。eスポーツ NFTのライセンス権に関する契約は、以下の3つの領域をカバーする必要があります。
- 範囲と制限 – ライセンシーとライセンサーの双方は、販売においてどのような権利が付与されるのか、また、それらの権利を合法的に譲渡できるかどうかについても明確にしておく必要があります。売り手は、買い手がNFTを使って実行可能なことを制限したいと考え、一方、買い手は、ライセンス料を払うことででできる限りの行動余地を得たいと考えます。契約書にはどのようなことが許可が譲渡されるのか明示されなければいけません。一般的に、ライセンスは、NFTの所有者ではなく、IPの所有者に他のすべての権利を留保します。例えば、希少性と価値を維持するために、クリエイターは、著作物に関連する限定数のNFTのみを作成する権利を他者に付与することができます。さらに、ライセンサーは、ライセンシーが原作の改変に基づいて NFT を作成を禁止することを明示したり、制限したりすることができます。NFTはレイヤー化され、プログラム可能な、ジェネレーティブアートの傾向が高まっていることから、これは特に重要と言えます。
- コンテンツの制限 – NFTの創作は、不透明で、時には秘密の世界の活動であるため、無知や悪意によって、第三者の知的財産権 (IP)を無断で採用してしまうミンターもいます。IP所有者はこれに注意を払い、警戒と執行の努力によって自らの創造物を保護し始めました。ゲームパブリッシャーやeスポーツ企業は、第三者のIPを使用する際には、コンテンツの制限を遵守しなければなりません。また、法的責任を回避するためには、必要な事前許可を得ることも重要です。
- 収益の分配 – ゲームパブリッシャーおよびeスポーツ参加者は、NFT契約の結果発生する収益をどのように分配するかを明確に定める必要があります。多くのIP所有者は、NFTの最初の販売時だけでなく、スマートコントラクトを介したその後の販売時にも報酬を得ることを意図して、IPに基づいたNFT作成権利を付与しているため、ライセンス契約における収益分配や利益配分の規定は非常に重要です。
名前・イメージ・肖像(NIL)について
NCAA(全米大学体育協会)のスポーツ選手が、自分の名前、イメージ、および肖像から利益を得る権利についての裁判を勝ちとったことが最近注目されているように、eスポーツ企業はNILに関する責務を理解する必要があります。今年から、多くの州で大学のスポーツ選手が、広告に出演したり、エンドースメントをしたり、製品やサービスを宣伝したりすることで、金銭や商品を得ることができるようになりました。ゲームパブリッシャーやeスポーツ企業は、このような動向に注目し、適切なライセンス要件を把握し、包括的な契約書を作成し、また必要に応じて報酬を分配する必要があります。
IP保護
ゲームパブリッシャーやeスポーツ企業による独自のトークン化資産の作成が増えているため、そのような企業は独自のIP保護戦略を検討する必要があります。ブランドオーナーは、自社の商標登録をNFTの使用や分類にまで拡大した方がいいかもしれません。また、特定のデザインやトレードドレス(製品のパッケージ、ラベル、レイアウト、色など)を自社ブランドと関連付けることもできます。更に、NFTの販売や再販から得られる利益は莫大なものになるため、デザイン特許の価値が高まるでしょう。デザイン特許は、著作権や商標権とは異なり、侵害者が得た利益のうち、デザインの無断使用に起因する部分だけでなく、その利益全体を所有者に帰属させることができます。トークン化資産やその他のデジタル・コレクティブルのIP保護を保証するために、適切な法的メカニズムを導入する必要があるでしょう。
証券と税金
米国でeスポーツファン・トークンを販売するチームは、マーチャンダイジングと証券取引の間の微妙な境界線を歩くことになるかもしれません。そのため、これらの法律、特に証券関連の規制を確実に遵守しなければなりません。セカンダリーマーケットで売買されるNFTは、SECが証券とみなさないような構造にしなければなりません。 規制当局がeスポーツ NFTを(収集品や芸術品ではなく)投資であると判断した場合、証券としての規制を求めてくる可能性があります。
セーフガード
ゲームパブリッシャーやeスポーツ企業は、自らの権利を確保し、法的措置から身を守るために、強固な利用規約、プライバシーポリシー、エンドユーザー契約、著作権保護、免責事項などを導入することをお勧めします。これは、直接的または間接的な侵害の申し立てがあった場合の保護にもなります。これらの法的文書の作成には、eスポーツやNFTを専門とする弁護士が役立ちます。
活況を呈するeスポーツ市場において、NFTがますます普及していくことは避けられないと思われます。実際、eスポーツをベースにしたNFTでは、発売後数ヶ月で売上高1億ドルを突破した例がすでにいくつかあります。このような大金が動く中で、上記のようなeスポーツNFT使用にあたり法的アドバイスを検討する必要性は、より顕著になると思われます。NFTは比較的初期段階にあるため、規制状況は未だ発展中です。ご自分のNFTを立ち上げる前に、eスポーツとNFTを専門とする弁護士に相談することが重要と言えます。NFTプロジェクトの開始時に詳細な法的アドバイスを受けることで、将来的に時間、費用、リソースを節約することが可能となるでしょう。
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