ヘビーメタ(Heavy Meta):メタバースにおける プライバシーとサイバーセキュリティ

ヘビーメタ(Heavy Meta):メタバースにおける プライバシーとサイバーセキュリティ

ヘビーメタ(Heavy Meta):メタバースにおける プライバシーとサイバーセキュリティ

1024 663 David Hoppe

メタバースは、21世紀最大の技術革命になると言われています。それは、人間関係を変え、社会交流に革命をもたらし、全く新しい経済を構築し、多くのプライバシーとサイバーセキュリティ問題を招く可能性があるでしょう。新興テクノロジー企業は、これらの問題を認識し、メタバース市場がグレーまたは全く未踏の法的領域に入る際に、リスク軽減の措置を講じる必要があります。この記事では、メタバースにおけるプライバシー及びサイバーセキュリティ関連の問題を検討します。

プライバシー

ショッピング、仮想旅行、娯楽、情報収集など、現在異種のパーソナライズされたデジタル体験を統合することで、相互接続された宇宙は、これまで以上に多くの個人データを収集、保存し、それに依存することが予想されます。メタバースのプロバイダーは、生体反応、身体的位置、財務記録、さらにはユーザーの家の外観など、より多くの個人データにアクセスできるようになるでしょう。さらに、マーク・ザッカーバーグ氏の「メタ」のようなメタバース企業は、個人の識別、広告のターゲティング、複数チャンネルによる追跡、健康モニタリング(心拍数や呼吸数など)、その他バーチャル体験を最適化するための個人情報を集めると思われます。メタバース企業は、私たちの生活のあらゆる側面に影響を与える膨大なデータを組み合わせ、集計していくでしょう。

メタバース、XR(エクステンデッド・リアリティ)、ビデオゲームなどのプラットフォーム上で、ユーザープライバシーを保護することは、現実的かつ法的な観点から深刻なハードルとなっています。また、メタ環境下では、それを誤った場合のコストは巨額となります。

  • デバイスとヘッドセットの普及 – Facebookの内部告発者フランシス・ホーゲン(Frances Haugen)氏によると、メタバースは、「完全にインタラクティブなバーチャルリアリティ体験を生み出すために、体に取り付けたセンサーに加えて、家庭や職場にはもっともっとたくさんのセンサーを置くことを必要とする」そうです。メタバースの設定には、ヘッドセットやAR(拡張現実)メガネなどの追加装備も含まれることが多く、家庭やオフィス内にライブカメラやマイクが持ち込まれることから、プライバシー上の大きな脅威となる可能性があります。というのも、このセンサーは個人の日常生活を前例のないようなリアルタイムで把握することができるようになるため、プライバシー問題が提起されるのです。インターナショナル・データ・コーポレーションの報告によると、2021年第2四半期のAR及びVR(バーチャル・リアリティ)ヘッドセットの出荷台数は、前年同期比2倍以上の220万台となりました。同社は、ヘッドセットの総販売台数は2021年に970万台に達し、2025年にはさらに3倍近くになると予想しています。この増加の多くは、より洗練されたゲームシステムと、イベント、会議、教育、フィットネス、メタバースにおけるVRの活用の両方によってもたらされるものです。
  • コラボレーションと相互運用性メタバースの主な目的は、人々をデジタル世界で交流させることです。そのためには、各メタバースがあらゆるデバイスやヘッドセットからアクセスできる必要があります。従って、ユーザーのデータがデバイスやプラットフォームを超えてアクセスできるようになるため、プライバシー問題が発生するのです。汎用的相互運用性の結果として生じるプライバシー問題を軽減するために、テクノロジー企業は異なるクリエイター間で統合されるコネクテッドメタバースの一定基準に合意するべき、と専門家は提案しています。このような基準がない場合、テクノロジー企業は独自のメタバース構築のために、他社の基礎技術を使用する権利をライセンス化する必要があるでしょう。

メタバースは、プライバシー関連の重要課題を提起しています。メタバース上でデータプライバシー保護の具体的な法律がない場合、新興技術企業はプライバシー問題のリスクを最小化するために、具体的な法的措置を講じる必要があります。

サイバーセキュリティ

メタバースのサイバーセキュリティの法的課題は、インターネットがもたらすものと同様であることから、社会一般の課題を反映していると言えるでしょう。専門家によると、メタバースは、そのユニークなインフラストラクチャーにより、全く新しいサイバー犯罪を生み出す可能性があるといいます。例えば、暗号通貨やNFT(非代替性トークン)が基盤となっているメタバースは、詐欺、盗難、マネーロンダリングなどの金融サイバー犯罪や、フィッシング、ランサムウェア、ハッキングなどの「旧来の」デジタル犯罪の温床となり得ます。

  • チーティングとデューピング(不正行為) – メタバースでは、攻撃者が複数のレイヤー、スクリーン、アバターの背後に正体を隠すことが容易であるため、不正行為の可能性が高くなります。有名なアートディーラーであるサザビーズは、最近、デジタルアートコレクターを対象としたサザビーズ・メタバースを導入し、オークションハウスのスペシャリストによって選ばれたNFTセレクションを提供しています。サザビーズ・メタバースで利用できるNFTは、イーサリアムを介したブロックチェーンの公開台帳によって検証され、デジタル追跡されます。しかし、実際の美術の世界と同様に、コレクターは正規の鑑定士を装ったサイバー犯罪者によって造られた偽造品、複製品、印刷物に簡単に騙される可能性があります。
  • サイバースクワッティング身元を隠すことが容易であるため、サイバースクワッティングを行うことも可能です。詐欺師は、正当な企業名を使用した.ETH(イーサリアムのドメイン)ウェブサイトを占拠することで利益を得ることができます。この場合、サイバー犯罪者は、被害者組織のものと見せかけたイーサリアムのドメイン名やスマートコントラクトを作成し、既存企業の善意や評判を利用します。したがって、ユーザーの身元確認が困難であるため、メタバース上の取引は安全でない場合があります。

このほかにも、ユーザーが安心してメタバースを利用できる一方、プラットフォーム所有者もたとえセキュリティ侵害が発生したり、サイバー犯罪者をかくまったとしても責任を負わなくてよいという安心感を得るためには、更に以下のような疑問にも答えなければならないでしょう。

  • メタバースのサイバーセキュリティはどのように管理されるのか
  • データの安全性に関して、どのような要件が適用されるのか
  • ディープフェイク、アバター偽装、トローリング、その他のサイバー脅威に対して、規制やサイトポリシーはどのように進化していくのか
  • この問題に対処するためにどのような法律が適用され、様々なプレーヤーがどのように協力するのか

メタバースは複雑な問題を提起していることから、既存法や規制を改正する必要性が高いと言えます。それまでは、適切な法的・技術的手段を講じることで、リスクを軽減し、メタバースユーザーをある程度保護することができます。

最近、Facebookのメタバースは、ユーザーのプライバシーを侵害している可能性があるとして、批判を浴びています。ホーゲン氏は、Facebookのメタバース(および仮想現実世界全般)には中毒性があり、個人情報の盗用に結びつく可能性があると主張しています。同様の疑惑を防ぐために、メタバース空間で活動する新興技術企業は、メタバースのプライバシー法に関する意味を十分に認識する必要があります。これらの企業は、独自のメタバース(または仮想プラットフォーム)プライバシーポリシー、個人データ保護ポリシー、データ保持ポリシー、データ主体の同意、ライセンス契約、及びその他の法的文書の作成を検討する必要があります。新興技術を専門とする法律事務所は、これらの法的文書作成を支援し、メタバースがもたらすプライバシー及びサイバーセキュリティ関連の規制に関するガイダンスを提供することができます。

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David Hoppe

All stories by: David Hoppe