ミント・コンディション:NFTアーティスト契約

ミント・コンディション:NFTアーティスト契約

ミント・コンディション:NFTアーティスト契約

1000 648 David Hoppe

この数ヶ月にわたり、知的財産権に関連する法的問題が大きく報道され、中には人気のあるNFTプロジェクトが中断されるケースも出ています。NFTプロジェクトが成功するには、NFTアーティスト契約書がいかに適切に作成され、その中でNFTミンターのオリジナルアートの使用条件がいかに明確に定義されているか、にかかっていると言っても過言ではありません。本稿では、優れたNFTアーティスト契約の主な構成要素と、NFTミンターやアーティストが自らの権利を守るために知っておくべき重要なポイントについて解説します。

NFTアーティスト契約の意味と重要性

 NFTアーティスト契約とは、芸術作品、音楽、最終財等の知的財産の創作者が、報酬と引き換えに、その作品を基盤とするNFTのミンターに一定の権利を付与する条件を記載した法律文書です。アーティストが、媒体を問わず、自らの作品を無許可の複製や販売から保護する一方で、その商業化に参加したいと考えるのは、非常に合理的なことです。NFTアーティスト契約は、例えばスポーツチームのロゴやアニメのネズミを描いたTシャツを制作・販売する際の、従来およびデジタルのメディアで使用されるライセンス契約に相当するものです。ライセンス付与の範囲を事前に定義することで、NFTミンターとアーティストとの間の紛争や対立のリスクを低減します。この契約は、非代替性トークン・デジタルアート・コミッション契約、NFTアートワーク・コミッション契約、NFTデジタルアーティスト・コミッション契約、デジタルアート契約、アーティスト・コミッション契約、ライセンス契約、またはその他の類似用語で呼ばれることがあります。

NFTミンターや開発業者が、自らが所有していないアートワークに基づくNFTを作成する際、事前に署名入りのNFTアーティスト契約を取得しなかった場合、そのアートワークの著作権、商標、その他の知的財産権に関わる紛争を招く可能性があります。例を挙げると、最近、あるアートコレクターが、著名なインド人アーティストM.F. Husainの絵画「Lightning ( 又は、The Guernica of Indiaとも呼ばれる)」の権利を明らかにするためにニューヨークの連邦裁判所に訴訟を起こしました。このアートコレクターは、60フィートの壁画を購入し、それを元にしたNFTを販売する予定です。一方、画家のエステートは、絵画を購入してもこの計画を実行するのに必要な権利は譲渡されないと主張し、異議を申し立てました。売買契約書にはNFTの権利に関する言及がないため、コレクターが作品を購入した際に実際に何が手渡されたのか、各当事者の立場を明確に判断する方法がないのです。

NFTアーティスト契約における主要条項

強力で包括的なNFTアーティスト契約は、契約の範囲、各当事者の権利と義務、当事者間の業務関係、タイムラインと納期、著作権所有権などが明記されています。

  • 契約の範
    少なくとも、NFTアーティスト契約には、ライセンスが供与または購入されるアートワーク、ライセンス契約期間、契約と引き換えにアーティストが受け取る手数料、ロイヤルティーまたはその他の対価、および、ライセンサーは自分が作成したNFTの使用について何が許可されているかが明確に記載されている必要があります。
  • 事者間の関係
    多くの場合、NFTミンターは、アーティストに職務著作 (ワークフォーハイヤー)ベースでアートワークを委託します。 このシナリオでは、ミンターは委託代理人または委託当事者とみなされ、アーティストはミンターが所有する製品を製造する請負業者として機能します。その他の状況として、企業が社内のイラストレーターやグラフィックアーティストを使用して、NFTにミンティングされる作品を制作させる場合があります。この場合は、雇用主と従業員の関係が優先され、組立ラインの作業員が車の組み立てを手伝うのと同様に、従業員はNFTに対して権利を有しません。また、ケースによっては、それほど単純明快ではないこともあります。知的財産権所有者やアーティストは、所有する作品に基づくNFTの制作、展示、マーケティング、販売、その他の活用を様々な提携関係に基づいて第三者に依頼することができます。これには、前払い、ロイヤルティー分配、利益配当、オプションなど、業績のあるNFT専門弁護士に委ねるべき高度な取引が含まれる場合があります。
  •  利と義務
    ライセンス契約では、アーティスト、NFTミンター、および作成されたNFTの将来の購入者が履行しなければならない義務や受け取る報酬を記述する必要があります。契約書には通常、アーティストがアートワークの物理的またはデジタルのコピーを作成することができるかどうか、アートワークを他者にライセンス供与できるかどうか、アートワークを基盤としたNFTのオリジナルまたはその後の販売に対してロイヤルティーを受け取ることができるかどうかが明記されます。同様に、契約書には、ミンターが一定期間NFTの独占権を保持できるか、その販売価格を決定できるか、付与された権利をサブライセンスできるかについて規定する必要があります。アーティストの義務としては、高品質のアートワークの制作、期限内の納品、その制作において第三者の権利が侵害されないようにする義務が含まれる場合があります。契約書には、NFTミンターによるアーティストへの支払い方法と時期が明記されるべきであり、常に作品をアーティストや作者に帰属させ、派生作品においてもアーティストの芸術精神および評判を維持することを義務付けることができます。
  • 著作
    NFTアーティスト契約において著作権所有権が十分に定義されていない場合、重大な問題を引き起こすリスクがあります。裁判所は、オリジナル資産の著作権はNFTミンター、購入者、ライセンシーに自動的に譲渡されないと判断しています。アーティストは著作権の譲渡、特定目的でのライセンス付与、NFTの使用を制限する権利を保有します。NFTミンターがこれらの権利のいずれかがアーティストから譲渡されることを望んでいる場合、NFTアーティスト契約書に明示的に記述しなければなりません。そうでない場合、オリジナルアート作品を作成したアーティストが著作権を保持します。
  •  管轄
    NFT関連法はまだ初期段階にあり、各州や国がそれぞれ規制を設けて前例を作っているため、NFTアーティスト契約には、意見の相違が生じた場合にどの管轄区域が統治するかを明記することが推奨されます。NFTミンターに同情的な司法当局もあれば、アーティスト側に立つ傾向がある司法当局もあります。アーティストの居住国やライセス供与する企業の法人格が関係し、一方が「ホームアドバンテージ」を持つ場合もあります。
  • 賠償責任
    NFTを取り巻く規制はいまだ進化しているため、NFTアーティスト契約書には、各当事者が義務を果たせなかった場合の結果を示す条項を含めることが重要です。つまり、各当事者の管理能力を超えた要因によって、失敗が起きる可能性を考慮する必要があるのです。例えば、管轄区域が新たな規制を制定し、NFTのミンティングよりが困難または違法となる場合、また、自然災害によりアートワークの作成またはNFTのミンティングの手段が失われる場合もあります。

NFTの作成、販売、ミンティング、開発を計画する企業や個人は、アーティストパートナーとのNFTアーティスト契約の作成および締結により、常に自らの権利を保護し、責任を明確にする必要があります。NFTアーティスト契約は複雑な文書となる可能性があるため、NFTおよび契約法の経験が豊富な弁護士に作成を依頼するのが最善です。多くのNFTアーティスト契約は、アーティスト支援団体やNFTミンターの推奨者によって作成されるため、両当事者の利益を十分に保護できないことに留意するべきでしょう。

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Author

David Hoppe

All stories by: David Hoppe