非代替性トークン(NFT)は、再びその多様性を証明しています。起業家たちは、ビデオゲーム、ドリンクレシピ、デジタルアート、ファンタジースポーツなど、さまざまなNFTの魅力的な用途を見つけています。そして今、映画業界もその流れに乗り、独自のNFTを立ち上げています。映画のためのNFTを作成することで、リアルタイムの劇場体験、グッズの販売、自主(インディペンデント)映画の資金調達、新作プロモーション、クラシック映画へのノスタルジーの向上など、多面的に盛況を呈しています。
NFTに新しい体験を求める映画業界
COVID-19が落ち着きを見せ、娯楽施設が再開される中、映画スタジオはファンの視聴体験を向上させる新たな方法を模索しています。遡ること2018年、20世紀フォックス映画社は『デッドプール2』のプロモーション用に限定版デジタルポスターNFTを使用しました。『ゴジラvsコング』の公開にあたり、レジェンダリー・エンターテインメント社は、映画の公開日に特別版NFTコレクションを発行すると発表し、主要スタジオによる初のNFTコレクションを実現しました。このNFTは、オーストラリアのデジタルコンセプト・アーティストであるBossLogic(Kode Abdo)によって作成され、デジタルブロックチェーン技術によって保護されています。
2021年、The Matrix Universe社は独自のNFTコレクションを発表しましたが、このNFTはデジタルアートではなく、人間のアバターで構成されています。これらのNFTは、ニフティのマーケットプレイスとのコラボレーションにより、Epic Games社のMetaHuman Creatorを使用して制作され、11月30日に発売されました。人間のアバターはそれぞれランダムに作成され、ユーザーはマトリックスの世界に自己を投入し、ユニークなキャラクターを作りました。このアバターは非常に人気が高く、販売開始後すぐにベンダーのウェブサイトがクラッシュした程でした。この不具合が修正されると、10万個のアバターは1週間足らずで完売しました。The Matrix NFTの購入者は、そのアバターの商業的権利を所有していません。しかし、NFTの製作者は、商標権、パブリシティ権等を含む、映画著作権の状況やその他の契約上の問題に注意する必要があるでしょう。
著作権法についての概要
アメリカ合衆国憲法第1条第8節第8項により、著作権は一定期間で失効します 。 科学および有用な技芸の振興を社会に促進するため、著作権は永遠に存続することはできません。しかし、著作権が消滅するまでの間、著作権者は自分の創作物や発見物を使用し、利益を得るための独占的権利を保持しています。この条項は、米国の知的財産権法の基礎となっています。
著作権とは、出版されているか否かにかかわらず、有形的表現媒体に固定されたオリジナルの著作物を保護するものです。合衆国法典第17編 に含まれている 1976年に制定された著作権法は、フェアユースを認め、著作権は創作者の表現や概念の解釈には及ぶものの、アイデアや手順そのものには及ばないことを明記し、全面的に改正した法律となりました。残念ながら、パブリックドメインで公開されている映画の包括的なリストはありませんが、いくつかの書籍やウェブサイト(ウィキペディアを含む)では、パブリックドメインに移行した映画を記録する試みをしています。
一般的に、著作権の有効期限は、保護期間が開始された時期によって異なります。1978年以前に制作された映画を含むオリジナルの著作物は、出版後28年目に更新の機会があり、出版日から最長95年間保護されることが可能です。1978年以降に製作または著作権を得た映画については、製作者の死後70年で保護が失効し、パブリックドメインに移行します。1926年以前に製作された映画のほとんどが現在パブリックドメインとなります。しかし、NFTの制作者は、特に映画のクリップを使用する際には、著作権者とのトラブルにならないように注意しなければなりません。
歴史的映画の権利に関する著作権問題
カルトクラシックや映画黄金時代の作品を愛するNFTコレクターのために、オープンシー(OpenSea)で間もなく開始されるクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』NFTシリーズでは、映画のシーンが描かれるほか、未公開映像、アウトテイク、ノーカットのオリジナル手書き脚本、監督のコメンタリーなどの「シークレット」が公開されます。コレクターは、「シークレット」を自分だけのものとすることも、数人の友人と共有することも、世界に向けて公開することもできます。この「シークレット NFT」は、Secret Network上に存在する新しい資産クラスで、イーサリアムのブロックチェーンを参考に設計されており、プログラム可能なプライバシー機能やオプションのプライベート・メタデータフィールドを備え、私的所有をサポートし、クリエイターによるアクセスコントロールの決定を可能とします。
NFTは、映画製作者に新たな収入源を提供することができるのです。しかし、映画製作者はNFT用にムービークリップを使用する際、映画やサウンドトラックの権利を所有していなければなりません。タランティーノ監督は、『パルプ・フィクション』のNFTの販売停止を求めてミラマックス社から提訴されていることから、既にご存知でしょう。この訴訟では、タランティーノ監督の契約上の映画の権利は、インタラクティブゲーム、ライブパフォーマンス、その他の補助的メディアにのみ及び、NFTは含まれないと主張されています。更に、タランティーノ監督は、自身の脚本の一部を「出版」することはできるが、その権利はNFTには及ばないとミラマックス社は主張しています。
これらの映画の権利は誰にあるのか?
映画製作は、知的財産権という観点から見ると、おそらく最も複雑な作業の一つと言えるでしょう。脚本からスクリーンまで、さらにはNFTの台頭によって今では公開後に至っても、映画製作の各段階で非常に多くの人が関わることが多いのです。
一般に、映画の著作権は、映画製作を手配した個人または団体に帰属します。通常、映画の制作会社/プロデューサーが映画の権利を保有していますが、個人投資家が著作権を保有する場合もあります。著作権者は、映画の映像や音声のみを所有し、音楽や脚本など映画の基礎的著作物を必ずしも所有するわけではありません。しかし、映画の著作権は契約によって決定されることもあるので、一定の期間、雇用契約、文学的権利、さらに映画の内容を使用したNFTのような派生作品の作成など、さまざまな方法で著作権を分割することが可能となります。従って、著作権の譲渡はすべて文書で行い、権利の連鎖を途切れないようにしなければなりません。
現在ところ、このルールはNFTにも適用されています。タランティーノ監督とミラマックス社の訴訟が示すように、双方の契約はNFTが存在する以前に成立したものであるため、NFTと映画著作権の適法性は多少曖昧なところがあります。しかし、NFT所有者は、NFTを購入したからといって、映画に関する全ての権利を所有するわけではなく、NFTそのものを所有するのみであることを認識しておく必要があります。NFT作成者は、特定の映画著作権を誰が所有しているかを判断するために、著作権法を知っておくと良いでしょう。
NFTを利用してエンジェル(投資家)を誘致するインディーズ映画制作者たち
自主(インディペンデント)映画製作者もこのNFTゲームに参加しているのは、NFTと映画の権利に関する興味深い展開です。監督、プロデューサー、配給会社、出資者は、常に自主映画の次の興行的大ヒットを探しています。2021年4月、ケビン・スミス監督(『ジェイ・アンド・サイレント・ボブ』で知られる)は、インディーズ映画『キルロイ・ワズ・ヒア』のNFTをオークションにかけると発表しました。スミス氏は、(『クラークス』でやったように)インディーズ映画をスタジオに直接売るのではなく、配給権も含めた映画そのものをNFTとして販売しています。
ジェニファー・エスポジート監督は、NFTオークションと公募を組み合わせたユニークな方法で、次の自主映画の株式を販売しています。映画公開後、株主は収益の一部を受け取り、株式は著作権に変換されます。自主映画製作者は、従来のハリウッドの資金調達方法や著作権を回避するため、プロジェクトの資金調達手段として、NFTを模索しているのです。
また、マーティン・スコセッシ氏との共同プロデュースで知られる映画監督のニールス・ジュール氏は、NFTのオークションによって、自身のハリウッド作品の資金をすべて調達しようとしています。NFTスタジオの創設者である彼のモデルは、従来のハリウッドの資金調達メカニズムを回避し、映画をより早くスクリーンに届けることを目的としており、自主映画が買い手を見つけ、スタジオにより配給されるまでに長時間を要する傾向を打破するものです。これらの映画の所有者はNFTへの投資事業団体や個人バイヤーで成り立っており、利益分配やライセンス権などの利益を得ることができます。
NFTはすでにその真価を発揮していると言えるでしょう。ハリウッド・ミーツ・NFTのシーンは活況を呈しています。しかし、NFTと映画の権利については最新の展開であることから、現在の著作権法では考慮されていないのが現状です。ハリウッドのスタジオがNFTで現金を稼いでいる一方で、映画監督や脚本家は今後の映画契約においてNFTの権利を考慮した対策を講じる必要があると言えるでしょう。
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