2023年7月13日の画期的な判決で、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所は、リップル社(Ripple Labs Inc.)がそのXRPトークンを公的な取引所で販売したことは連邦証券法に違反しないと判断しました。この判決は暗号通貨業界にとって重要な勝利であり、デジタル資産企業や クリプト通貨愛好家から広く称賛を浴びました。この判決は、暗号通貨が米国内でどのように規制され、分類されるかのリトマス試験紙とみなされており、今後の裁判の先例となる可能性があります。規制当局の期待がより明確になることから、暗号通貨やNFTを扱う企業にとっての法的障害が軽減されるかもしれません。デジタル・ファイナンスの変革期を乗り切るには、法的状況を理解することが極めて重要になると言えるでしょう。
本稿では、今回の判決の複雑な内容を掘り下げ、現在の意義や将来への潜在的な影響を考察します。また、この判決が米証券取引委員会(SEC)の今後の動向に与える影響や、急速に発展している暗号通貨やNFT(非代替性トークン)の分野で事業を展開する企業への潜在的な波及効果についても検証します。
背景と判決
暗号通貨業界の大手企業であるリップル社は、「SEC v. Ripple」という高額な法廷闘争に巻き込まれました。この訴訟は同社とその幹部2名が、XRPトークンや他のデジタル資産・暗号通貨を販売したことで、未登録の証券を販売した罪に問われるというものです。米証券取引委員会は、リップル社がこれらの販売を通じて13億ドル以上の資金を調達しながらも、証券として遵守すべき情報開示や登録要件を満たしていなかったと主張しています。
もちろん、リップル社は、XRPは証券ではなくデジタル資産であり、したがってその厳格な規制と監視の対象ではないと主張しています。
アナリサ・トレース連邦地裁判事は、XRPトークン自体は、特定の資産が証券に該当するかどうかを判断するためのHoweyテストで定義される「投資契約」に該当しないと判断しました。トーレス判事は、米証券取引委員会の申し立てに一部同意したことから、今回の判決はリップル社にとって完全な勝利とは言えませんが、これはリップル社だけでなく、より広範なデジタル資産業界にとって大きな意味を持ちます。米証券取引委員会は長らく、ほぼすべてのトークンは投資契約証券に該当するという立場を取ってきました。しかし今回、裁判所はこの過度に広範な解釈を否定し、代わりに問題となっている各取引の状況を総合的に評価しました。
トーレス判事は、XRP取引の4つのカテゴリーのうち3つは有価証券とは関係ないと判断しました。そのため、リップル社と他の被告はこれらの取引について連邦証券法上の責任は問われないとの判決を下しました。
米証券取引委員会は、リップル社が 「公正な通知 」を欠いたという理由で、デュー・プロセスの異議申し立てを退けるなど、一部主張が認められたたものの、判決の大部分はリップル社に有利なものでした。この判決は、業界が長い間求めていた規制の明確化を提供するものですが、同時に、デジタル資産を規制することの複雑さと、こうしたユニークな特性を持つ資産のための明確で適切なガイドラインの必要性を強調しています。法的環境が進化し続ける中、暗号通貨やNFTを扱う企業は、潜在的な法規制の課題をうまくナビゲートするために、常に動向を把握する必要があるでしょう。
新興テック企業への影響
前述の通り、今回の判決は暗号通貨業界のパワーバランスに変化をもたらすものですが、決して万能の解決策とは言えません。この事例は、暗号資産を取り巻く規制上のすべての問題を明確にするものではなく、むしろ長い間解決されていない不確実性を浮かび上がらせたとも言えます。
判決後の暗号通貨業界の歓喜は、もしかすると時期尚早かもしれません。一部の専門家は、この判決には、より広範な影響を抑制しうる要素があることから、判決の影響は当初考えられていたよりも限定的なものになるかもしれない、と指摘しています。結局のところ、裁判所は米証券取引委員会の主張の一部を認めたため、同委員会はバイナンスやコインベース、その他の暗号通貨ビジネスに対する訴訟を追求する際、こうした側面に焦点を当てる可能性があるでしょう。
実際、法廷闘争はまだ終わってはいません。米証券取引委員会にはまだいくつかの法的選択肢があり、最終的な解決には数ヶ月から数年かかるかもしれません。業界は法的な環境が進化し続ける中、警戒を怠ることなく、注意を払う必要があります。
さらに、連邦地裁の判決は、第2巡回区連邦控訴裁判所、さらにはニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所や全米の連邦裁判所には拘束力を持ちません。同様の訴訟でまったく異なる結論が下される可能性もあり、それが規制上の不確実性を増大させることになるかもしれません。
最後に、トーレス判事はXRPや他のトークンの二次市場での販売にまで見解を及ぼすことを明確に拒否しました。したがって、これらの取引の法的地位については、未解決で不明瞭な部分が残されています。
こうした問題はあるものの、今回の判決は暗号通貨を扱う新興テック企業にとっては明らかな勝利と言っていいでしょう。
「リップル社の判決は暗号通貨業界の勝利以外の何物でもない」と元米証券取引委員会職員クリスチャン・シュルツ(Christian Schultz )氏はCoinDeskに語っています。「XRPは証券ではなく、同社と同社幹部によるXRPの二次市場での取引は、証券取引法に違反するものではありません。」
米国証券取引委員会の選択肢
もし米証券取引委員会の控訴を免れれば、この判決は暗号通貨の分類と規制に関する先例となり、米国証券法によるコンプライアンスの負担が軽減されるかもしれません。米証券取引委員会は、最終判決が出る前であっても、中間上訴(interlocutory appeal)を行う可能性が高いでしょう。判決は最終的でないため、これが施行されるためにはトーレス判事と第2巡回区裁判所双方の承認が必要となり、以下の3点が実証されなければなりません:
- この事例が法律上の論点にかかっていること
- この事例が意見や解釈を大きく異にする可能性をはらんでいること
- 再検討することで、根本的な問題や訴訟への理解が深まる可能性があ
米証券取引委員会はまた、訴状に名前が挙がっているリップル社の幹部であるクリス・ラーセン(Chris Larsen )氏とブラッド・ガーリンハウス(Brad Garlinghouse)氏に対して共謀・教唆の告発を行い、現行訴訟の判決が正式に下された後に通常の控訴を行うことも検討できます。米証券取引委員会はリップル社幹部に対する請求を取り下げ、正式判決と即時上訴への道を開く可能性もあります。最後に、最も可能性の低い選択肢は、米証券取引委員会が損切りをし、リップル社や他の被告と和解することでしょう。
結論
この裁判のリップル効果によって、新興テック企業にとって極めて重要な判例が設定される可能性があります。これは、多くの差し迫った法的問題、特に新興テック企業が米国証券法の登録・開示要件を遵守する義務があるか否かについて、切望されていた明確性を提供するものです。これが明確になったことで、デジタル資産や暗号通貨分野での技術革新や市場活動が活発化されることが期待されます。しかし、このリップル効果の可能性は、最終評決の内容にかかっています。もし判決があまりに保守的な方向に傾けば、暗号通貨やデジタル資産業界のさらなるイノベーションを阻害し、早期停滞につながる恐れがあります。
この事例は、暗号通貨業界における複雑かつ急進展する規制状況を浮き彫りにしています。そのため、この分野で事業を展開する企業は、専門家の法的助言を求めることが極めて重要です。ブロックチェーンや暗号通貨法を専門とするWeb3弁護士に相談することで、デジタル資産関連の法的課題や潜在的リスクについて重要な見解を得ることができます。また、Web3弁護士は複雑な規制をナビゲートし、イノベーションと成長の機会を活用しながらコンプライアンスを確保するサポートを提供します。
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