先住民によるカジノと 賭博事業の推移

先住民によるカジノと 賭博事業の推移

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先住民によるカジノと 賭博事業の推移

1000 648 David Hoppe

アメリカ先住民は何世代にもわたって迫害や不当な扱いを受けてきました。まず、ヨーロッパからの移住者から奴隷として扱われ虐待を受け、さらにアメリカ合衆国やカナダ政府の代表者たちが先住民族の権利を侵害し、何百万もの先住民を強制的に退去させたという歴史があります。多くの先住民族は、今日でもこの迫害の影響を乗り越えるのに苦労しており、一部の先住民族は全滅してしまいました。

数えきれないほどの悲劇的で侵略的な迫害や虐待の結果、アメリカ先住民は部族が歴史的に所有していた土地、聖地、そして伝統的な生活様式をほぼ全て失ってしまったのです。しかしこのような扱いを受けながらも、アメリカの先住民やカナダのファーストネーションは存続し、現代のアメリカ人およびカナダ人として生きながら、部族の伝統と自治政府を守り続けています。現在この自治政府の大部分は賭博事業によって支えられていますが、最近になって賭博関連の連邦法が改正されたことにより、賭博事業に混乱が生じています。

アメリカ合衆国における部族統治権

アメリカ合衆国政府が歴史的条約の一部として合意したことにより、アメリカ先住民族は連邦政府、州政府、地方自治体から独立し、自らの法律を適用することが可能となっています。米国最高裁判所が部族の統治権を支持した最近の例では、2020年のMcGirtOklahoma訴訟があり、最高裁は居留地の歴史的境界線と部族の自治権を支持しました。自身の居留地における犯罪を疑われた先住民について、オクラホマ州はその先住民を裁く司法権を持たないという判決です。

最高裁によって部族の統治権が明確にされた裁判は多数あり、原則的に先住民らは自らの土地においてどのような行為が認められるかを決定することができるようになっています。これには賭博も含まれ、先住民族の土地における賭博は、彼らの重要な収入源であり、また多くの部族にとって機能的な統治権を維持するための資金を築くものです。先住民部族は厳密な法解釈の下の主権国家とみなされる一方、連邦議会はアメリカ先住民の暮らしの一部を規制することが可能ですが、この規制の範囲と程度は時代とともに衰退しています。

1970年代初頭、一連の最高裁判所における裁判により、規制を受けていた先住民族による賭博事業に門戸が開かれました。BryanItasca County訴訟[1]は、現代の先住民による賭博事業に関係する法律制定の幕開けと言えるもので、先住民族の土地への課税および規制について、州政府および地方自治体の権限が制限されることを定めた裁判です。1988年には連邦議員がインディアン賭博規制法を可決。これは先住民の土地における賭博事業の法令を定めたもので、会計処理の方法や許可される賭博の種類などの詳細ついて、部族と州が合意しなければならないとしています。

カナダにおけるファーストネーションの賭博事業

カナダの人気カジノ所有者の多くは、州政府または州政府が賭博免許を付与したファーストネーションです。地元の関心とは相反する場合があるため、州政府はファーストネーションへの賭博免許付与に消極的であり、実際認可を受けて営業しているファーストネーションのカジノは、カナダ全土で16件しかありません。そこで先住民の代表者らは、さらに多くのファーストネーション所有のカジノが認可されるよう、カナダ政府に強く訴えています

ファーストネーションが賭博免許取得に苦戦している一方、オンライン賭博は、カナダ全土に無規制で広がっています。カナダ最大の州オンタリオ州は、カナダでのオンライン賭博拡大を認可するための規制改革を計画しています。この法改正は米国に持ち込まれるものではありませんが、現実のカジノからオンラインへ賭博プラットフォームが大きく変わることは、北米全体での先住民による賭博事業に変革をもたらすものとなるでしょう。

米国における先住民の賭博事業の現状

インディアン賭博規制法が通過したことにより、先住民居留地での賭博は、概して賭博を許可した部族にとっての恩恵となっています。先住民によるカジノ事業は居留地の税収、雇用レベル、部族人口を引き上げ、部族の賭博事業が成功すれば、低収入労働者に影響する問題の改善にもつながるのです。

2020年末までには、29の州において247の部族により少なくとも527の認可賭博施設が運営され、全体の収益合計は$330億を超えました。米国のインディアン・カジノは、部族コミュニティと州にとっての収入源であり、人気の観光名所ともなっています。しかし、最近の米国賭博法の改変が、先住民による賭博事業の現状に変化をもたらす可能性があります。

以前は、インディアン・カジノが州内でギャンブルを行う唯一の合法手段であったことから、先住民による賭博事業成功のための非常に大きなカギとなっていました。しかし2018年の最高裁による極めて重要な判決で、オンライン賭博とスポーツ賭博の拡大が認められるようになり、この指針の変革がそれまで先住民による賭博事業に依存していたギャンブル業界の状況に変化をもたらすこととなります。この変革は先住民による賭博事業に新たなチャンスをもたらす可能性がある一方、米国の合法賭博市場における競争激化につながるでしょう。

Murphy対NCAA

2018年のMurphyNCAA訴訟において最高裁判所は、プロフェッショナルおよびアマチュアスポーツ保護法(PASPA)は米国憲法修正第10条に違反しており、従って法的に無効であるとしました。PASPAによると、連邦政府はスポーツ賭博を規制できる州の能力を不正に制限することが可能ですが、最高裁判所は、これは権利章典の下で認められている州が有する権利を侵害する憲法違反であると説明しました。

最高裁判所は、Murphy判決においてはスポーツ賭博を合法化しませんでしたが、各州がその管轄内において、オンラインかオフラインにかかわらず、スポーツ賭博を承認するか否かを独自に決定できる道を開くこととなりました。この判決以前、州によるスポーツ賭博合法化は、連邦法によって禁じられていました。

現在多くの州ではスポーツ賭博を許可する法律が可決されており、厳しい規制の下で計画性をもって賭博の合法化を進めています。例えば、大部分の自治体では、賭博サービスを提供できる事業体の数を制限しています。既存のカジノはこのような法規制には馴染みがあるため、Murphy訴訟後に現れている新しいオンライン賭博やスポーツ賭博事業のほとんどは、既存カジノの関連事業体であることが実状です。

インディアン・カジノに対するMurphy訴訟の影響

Murphy訴訟の前までは、一部の州において合法的スポーツ賭博、その他の賭博を提供していたのは先住民による事業のみでした。Murphy訴訟後、先住民は激化する競合問題に直面することとなり、また、より厳しくなるオンライン賭博やスポーツ賭博に関わる州法に対処しなければならなくなっています。しかしそれでもコロナ禍において財政に大打撃を受けている州政府は、オンライン賭博などから可能な限り税収を集めようとすることが考えられます。このことからもMurphy訴訟の影響は、先住民に競合のプレッシャーを与えるものではなく、先住民による賭博事業拡大の後押しとなると言えるでしょう。

  • オンライン賭博拡大の可能性
    米国におけるオンライン賭博は以前より複雑で法的にあいまいな活動となっています。外国企業や国際的企業は、米国内の賭博が許可されていない地域にあるコンピュータからもアクセスできる半合法的オンライン賭博を長年の間提供してきました。しかし最近では、プレッシャーに譲歩し、オンライン・カジノを認めるという州が増えてきています。そして先住民らは既存の賭博事業者として、合法的なオンライン賭博の波による恩恵を受けられるポジションを確立しているのです。

    先住民は既にオンライン・カジノ事業の許可を申請しはじめており、2020年12月にミシガン州のインディアン・カジノが初めてオンライン賭博の提供を許可されました。さらに多くの先住民族が彼らの既存カジノを通じてオンライン賭博を提供するようになると同時に、他の競合者による州への請願が増えるという傾向が予想されます。

  • 新たなオフライン賭博
    インディアン賭博規制法は、インディアン・カジノを規制する法律であり、州と先住民族との間で交渉が行われ米国内務省が許可した賭博にのみ適用されるものです。今後オンライン賭博を認める法律を制定する州が増えれば、各州は先住民との交渉においてより多くの種類の賭博を認めるようになるため、インディアン・カジノはその営業内容をオンラインにも広げるようになると考えられます。

  • オンライン賭博は今後5年間で急速に成長すると予想されますが、オンラインに移行するインディアン・カジノの事業がその成長の何割を担うことになるかは不透明です。またファンタジー・スポーツ賭博アプリの人気が上昇しており、拡大するオンライン賭博から最も恩恵を受けるのは、従来のスポーツ賭博やファンタジー・スポーツ賭博部門と考えられます。先住民族による賭博事業者がこれら部門の市場で成功すれば、近年の法改正は先住民族による賭博事業に大きなメリットをもたらすこととなるでしょう。

  • 連邦通信法による制限
    オンライン賭博は州で合法化されても、全体的には連邦法によって規制されます。連邦通信法は、賭博事業者が賭け金や賭け情報を州境を超えて送受信することを禁じています。つまりある州において合法的な賭博事業者であっても、連邦通信法によって他の州から掛け金を受け取ることはできません。またこれを取り締まる捜査官は、違反の発見に非常に優秀です。

    近年では、予想されるギャンブラーの位置情報を把握できる高度なジオロケーション技術を採用して取り締まりが行われています。そのためインディアン・カジノや民間カジノは、オンライン賭博参入を計画していても、事業体のある州内でのみの営業に制限されてしまいます。たとえ隣接する州がオンライン賭博を認めていても、連邦通信法による制限は同様に課されます。

今後のオンライン賭博と先住民による賭博事業

独立した先住民族による対面式のカジノ経営は今後も続くと思われますが、オンライン賭博の普及と成長がインディアン・カジノの収益に悪影響を及ぼすか否か、または反対に新たな成長と拡大のチャンスとなるか否かはまだわかりません。オンライン賭博に関する法律は複雑であり、オンライン賭博事業の状況が変化する中、リアルマネー・ゲームやスキルベースのゲームに適用される各種法律の経験がある弁護士なら、オンライン賭博の拡大を目指す先方々に貴重なアドバイスを提供することができます。

北米における賭博関連の法律が将来どのようになろうとも、オンライン賭博事業の状況はより複雑化することは確実です。インディアン・カジノ、民営カジノ、スポーツ賭博事業者は、新しい法律とチャンスが生まれるに従って、主導権を争うことになるでしょう。この複雑な環境において成功を収めるには、賭博事業の運営を指導できる優秀な法律顧問が不可欠です。

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David Hoppe

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