2020年はじめ、Sandbox VRは北米とアジアに10カ所のVRゲームセンターを運営する業績の良い企業でした。しかし、5月1日までには全店舗が閉鎖されました。収益はゼロに落ち込み、100名いた従業員のうち、80名が解雇されました。現在、再開して安全に運営しようと準備する中、この解雇と運営資本の不足がさらなる課題を生み出しています。
Sandboxに降りかかった問題は、米国及び海外のVRセンターにとって他人事ではありません。飲食店や実店舗の小売業者そしてスポーツイベントなどのように、VRショップもソーシャルディスタンスと収容人数の縮小に対応できるよう、収益モデルを変更する必要があります。しかし、このビジネスの性質上、他人が着用したばかりのヘッドセットを着けるのを敬遠する利用客を納得させるなど、安全面ではさらなる課題があります。
来店客に依存している地域ベースのVRエンタテインメント事業、特にゲーミングやゲームセンター業界の企業は苦境に立たされています。これらの企業は、来店客のほとんどを失いながらも、賃料は支払い続けなければなりません。多くのLBE(地域ベースのエンタテインメント)が観光地にあるため(例えば、The Voidはミネアポリスのモール・オブ・アメリカ、ワールドトレードセンター、ラスベガス・ストリップにあります)、賃料が高い上に観光客がほとんどいない状態です。新型コロナウイルスにより、収容人数が制限されており、しかも消毒のために従業員数を増やさなければならないとなると、事業費を賄うだけの収入が得られない場合もあります。
White Hutchinson Leisure and Learning GroupのCEOであるランディー・ホワイト氏(Randy White)は、LBEは負債比率が高いため、最低でも新型コロナウイルス発生前の集客と収入の70%を確保しなければ存続できないと言っています。ワクチンがあればまだしも、これは早急には望めそうにありません。
「どの世論調査を見ても、再開後の1ヶ月ほどで、FECやそれ以外のLBEを再び利用してもいいと感じている人々の数は、損益をとんとんの状態にさせるには低すぎると出ています。つまり、今のままでは継続的な経費も債務支払いもできないわけです。さらに、ソーシャルディスタンスで収容人数が50%に制限され、客数が減らされるので、収支が合う状態にするのは非常に難しいです。十分な客数がどのくらい早くLBEに戻れば収支が合い、そして利益が得られる状態になるのか、それが問題です。」
資料: Morning Consult: https://morningconsult.com/2020/11/10/tracking-consumer-comfort-with-dining-out-and-other-leisure-activities/
LBE専用施設でのVRゲームやエンタテインメント、その他の体験への支出は、2019年には15億ドルに上っていたものの、Gamedev.netの予測では「今年の支出額はその25%」となっており、急速な回復もほとんど望めません。このサイトの見積もりでは、2023年になっても支出額は2019年の71%にしか達しないだろうとしています。
では、地域ベースのVR企業はどうしたらいいのでしょうか。事業を安全に再開し、利益を上げるのに十分な顧客を呼び込むには、クリエイティブな対処法が必要かも知れません。
戦略転換で生き抜く
パンデミックに対処して適応できる事業は成功します。それは、素早く現場の顧客エンゲージメントを閉鎖したり、マーケティングや財務など一部の機能をリモートワークに移行することかも知れません。極端な現金節約方法をLBEは自然に導入してしまうかも知れませんが、慎重な投資の方がより迅速な回復をもたらします。そこで、以下の3つの主要分野にリソースを割り当てることを提唱したいと思います。
- 顧客とのコミュニケーション——Eメール、ダイレクトメール、その他の低コストのマーケティング戦術で顧客とのコミュニケーションを再び確立し、顧客にも貴社ビジネスを身近に感じてもらうことができます。双方向のコミュニケーションであれば、顧客に戻ってもらうには何をしたらいいのかの洞察を得ることもできます(消毒の可視化、より低い料金など)。顧客をセグメント化し、クラブ会員、大家族、ローカル顧客、年間パス所持者など、価値の高いビジターにリソースを集中させたらよいでしょう。
- アップグレードと新たな現金の流れ——新しいアドベンチャーやコンテンツ、飲み物や食べ物などのオプションの追加、ゲームプレイの拡張、そしてその他の変化があれば顧客もワクワクして戻って来ます。これは、完全でインタラクティブそして拡張的なVR体験を、自宅でのVRと差別化するためには特に重要です。
- 健康と安全の促進——潜在顧客には、貴社が安全を確保するために取っているステップを示しましょう。ヘッドセット用の消毒剤、防御用プレキシガラス、顧客の流れや待機スペースのスムースな誘導などに投資し、入店時の体温チェックを導入してください。こうした投資を積極的に宣伝し、顧客が貴社施設に戻るにあたっての懸念を払拭しましょう。
LBEによっては、既存のテクノロジーを活用し、新しいGo-To-Market戦略に転換できる場合もあります。オンラインでの株主総会、展示会、採用面接などに興味のある企業をターゲットにすることもできます。VRを利用したオンラインでの仮想コラボや会議、プレゼンテーションなどは、今後の新しい仕事のあり方の大きな部分になると思われます。対面インタラクションのシミュレーションは、プロジェクトの引き渡しやクラウドソーシング、または複数のタイムゾーンにわたって経営する企業にとって非常に重要です。没入型の技術なら、旅行制限や会議がキャンセルされてもそれを補うことができます。自社設備に多額の経費をかけたくない企業なら、参加者を自宅のデバイスに接続させ、製品トレーニングや新規採用者のオリエンテーションを行ったり、B2Bにおける顧客との会議を開催するためなどにVRスタジオをレンタルしても良いと思うかも知れません。このようなニッチな需要に目を当てたLBEは、航空券、ホテル、カンファレンスセンターのレンタル、およびその他の対面会議の経費に法人が割り当てていた予算を収入として得ることができます。
LBEは、プライベートなパーティーやチーム作りのための演習で使用できるモバイルユニットを作成することもできます。バーチャルなエスケープルームなら、新型コロナウイルスでソーシャルディスタンスを取らざるを得ないために、閉所性発熱に苦しめられている人々には救いになるでしょう。短期的には、企業がビジネスやチーム、顧客会議にVRを採用するに従い、サプライチェーンでボトルネックが発生し、必要なハードウェアの調達が遅れた場合、LBEがオンライン会議に必要なヘッドセットやその他のインフラを提供し、そうした配送の落差を埋めることもできるでしょう。
新型コロナウイルスと外出禁止によって、自宅用VRの需要がかつてないほど増加しました。ワクチンが比較的早く導入されることになれば、消費者の興味がうまくLBEに向くかも知れません。最近VRに夢中になった消費者なら、より大型で没入型のアリーナで、自宅用では不可能なVRテクノロジーを体験してみたいと思うことでしょう。プラットフォームとシステム管理ベンダーのVR Studios社は、「消費者は、今は自宅にいながら楽しんでプレイし、練習し、そして他のプレイヤーと気軽にオンラインで競い合っています。そして、そうして得たスキルと実績をLBEスタジオに持ち込んで、マルチプレイヤーのソーシャル体験を体で楽しみながら、食事やドリンクを味わい、LBEしか提供できない正式な競技に参加することでしょう。LBE事業にとっては、消費者の意識を高め、自宅にいるプレイヤーとの接点を保ち、店舗内イベントを促進して収益に繋げる新たな選択肢が出てくるのです。」
自宅からLBEへの移行をより容易くしている企業が少なくとも1社あります。プレイヤーが自分のプロフィールや戦績をLBEセンターに持ち込んでプレイの続きをしたり、またはその逆を可能にしているのです。Player Portalでは、プレイヤーがプロフィールを作成し、自宅でプレイする場合でも、ATOMやFLEXシステムといったアーケードでプレイする場合でも、スコアとグローバルなリーダーボードのランク付けを追跡できるようにしています。
VRビジネスが直面する難題を知り尽くしており、テクノロジーとコンテンツ、ハードウェア、その他の分野に関わる関係をよく知る法律事務所を利用することで、LBEは現在の嵐を乗り切ることが出来ます。Gamma Lawは、AR/VR、ビデオゲーム、その他のハイテク業界のステークホルダーのお手伝いを専門にさせていただいております。LBEが債権者やコンテンツデベロッパ、そして家主などと、支払い調整をはじめ、関係者すべてがメリットを受けられるその他の契約などに関する交渉をする際のお手伝いすることができます。また、デベロッパや投資家と共に、クリエイティブなソリューションを進めることを望む融資パートナーやベンダーを探すことで、貴社の存続を助け、来たる経済回復に向けた繁栄を支援するお手伝いをいたします。
Gamma Lawはサンフランシスコに拠点を置き、最先端のビジネスセクターのお客様をサポートしています。複雑でダイナミックなビジネス環境で成功するために必要なサポートを提供し、イノベーションを促進し、国内外におけるビジネス目標達成のお手伝いをいたします。お客様のビジネスニーズに関するご検討は、ぜひ弊所にご連絡ください。