米国特許商標庁(USPTO)は、2025年5月の改訂により、商標審査手続マニュアル(TMEP)に仮想商品に関する新たな規定である§1401.15(d)を追加し、小売サービスに関する§1402.11(a)(vi)を改訂しました。この変更は、Web3、ゲーム、デジタルメディアその他の新興仮想環境で事業を展開する企業の知的財産(IP)戦略に重大な影響を及ぼします。特に、仮想商品、デジタルメディアおよびビデオゲーム分野の企業にとって重要なのは、NFTを商品そのものではなく、商品に付随する認証手段または証明書として捉える点です。
米国特許商標庁は、「NFT」または「非代替性トークン」という表現だけでは、商標法上の商品または役務を明確に特定できないとして、指定商品・役務の記載として認めていません。NFTは、デジタル資産または物理的資産を認証するための識別情報をブロックチェーン上に記録したものです。NFT自体が基礎となる商品や資産そのものを構成するわけではありません。また、NFTを保有したからといって、基礎となる資産の所有権や関連する知的財産権が必ず移転するわけでもありません。そのため、NFTを利用した商品について商標出願を行う企業は、認証に用いられるトークン自体ではなく、NFTに関連付けられ、消費者に提供される具体的な商品または役務を特定する必要があります。具体的な記載を求めるこの要件は、「NFT」「デジタル・コレクティブル」「バーチャル商品」といった用語を中心に、製品開発、マーケティング、知的財産ポートフォリオを構築してきた企業にとって、実務上の見直しにつながります。こうした用語はビジネスモデルを説明するうえでは有用ですが、商標出願で指定する具体的な商品または役務を必ずしも示すものではありません。
この影響は商標出願にとどまりません。製品アーキテクチャ、ユーザーのアクセス方法、流通形態、マーケティング用語にも及び、企業が自社の商品やサービスをどのように説明し、保護するかに影響を与える可能性があります。
NFT自体は商標登録の対象にならない
米国特許商標庁は、商標出願において「NFT」という表現だけで指定商品または指定役務を特定することを認めていません。TMEP § 1402.02によれば、第1条または第44条に基づく出願で、指定内容がこのような不明確な表現だけで構成されている場合、商品または役務の性質を第三者に知らせることができないため、出願日が認められないことがあります。不明確な表現が、具体的な商品または役務の記載と併記されている場合は、出願日の取扱いが異なります。ただし、「NFT」に関する不明確な記載は考慮されず、後日の補正で指定範囲を拡大する根拠にもできません(37 C.F.R. § 2.71(a)、TMEP §§ 1402.06、1402.07)。マドリッド議定書第66条(a)に基づく出願には例外があり、国際登録日に基づく取扱いとなります。適切な出願を行うには、NFTによって認証される具体的な商品、または事業者が実際に提供する役務を記載する必要があります。対象となる例として、ダウンロード可能な画像ファイルや音楽ファイル、ハンドバッグ、オンラインマーケットプレイスなどが挙げられます。
例えば、NFTによって認証されたデジタルアート作品を販売する企業を考えてみましょう。「NFTコレクティブル」という表現だけでは、商品を十分に特定できません。これに対し、「非代替性トークン(NFT)によって認証されたトレーディングカードを含むダウンロード可能な画像ファイル」と記載すれば、基礎となる商品、その内容、NFTの役割を具体的に示せます。このような記載は、USPTOが商品・役務を分類し、先行商標を検索する際の参考となります。また、第三者が自らの商標を調査する際にも、主張されている権利範囲を把握しやすくなります。
同じ原則は物理的な商品にも当てはまります。例えば、「非代替性トークン(NFT)によって真正性が認証されたジュエリー」という記載は、国際分類第14類の商品を特定します。この場合、NFTは商品の真正性を認証する仕組みです。製品チームと法務チームは、商品分類や提供内容、使用する用語を整合させておく必要があります。ウェブサイトでは「NFTコレクティブル」、製品資料では「デジタル資産」、商標出願では「ダウンロード可能な画像ファイル」と表現していると、不要な曖昧さが生じるおそれがあります。商標出願でマーケティング用語をそのまま使う必要はありませんが、実際に提供する商品または役務を、分類上適切かつ正確に記載することが重要です。
媒体ではなく、提供する商品・役務を具体的に記載する
更新されたガイダンスは、商標分類に関するより広範な原則を反映しています。すなわち、商品分類は、商品・役務の提供に用いられる技術ではなく、商品の機能・目的、または役務を構成する活動の性質に基づいて判断されます。この原則は、ニース分類の一般備考に由来するものであり、TMEP §§1401.02(a)および1401.15(c)にも反映されています。
この点は、サイバースペース内でのみ使用される商品について特に重要です。「バーチャル商品」「仮想アクセサリー」「デジタル・コレクティブル」といった表現は、それだけでは範囲が広すぎるため、出願人は提供するデジタルアイテムの種類を具体的に記載する必要があります。例えば、仮想ファッションを扱う企業は「ダウンロード可能な仮想衣料品」と記載できます。また、仮想環境内で使用するハンドバッグの画像ファイルを提供する場合は、「オンライン仮想環境で使用するためのハンドバッグの画像ファイル」と記載できます。重要なのは、そのアイテムがブロックチェーン上に存在するかどうかではなく、消費者が実際に何を受け取るのかという点です。
もう一つの重要な区別は、仮想アイテムをダウンロードできるか、それともプラットフォーム内でのみ利用できるかという点です。分類は、アイテムがどこで使用されるかではなく、ダウンロード可能かどうかによって異なる場合があります。ダウンロード可能な仮想アイテムは、仮想世界内でのみ使用される場合でも、国際分類第9類の商品に該当することがあります。例えば、次のように記載できます。
「オンライン仮想世界で使用するためのサングラスの画像ファイルである、ダウンロード可能な仮想商品」
一方、ダウンロードできず、プラットフォーム内でのみ利用できるアイテムは、役務に該当する場合があります。例えば、次のような記載が考えられます。
「娯楽サービス、すなわち、仮想環境で使用するためのダウンロード不可の仮想家具をオンラインで提供するサービス」
分類は、企業が意図する商品・役務について適切な保護範囲を確保するうえで重要です。したがって、出願時には、使用される技術や媒体だけでなく、消費者に提供される具体的な商品または役務、その機能、目的、提供方法を正確に記載する必要があります。
ダウンロード可能な商品とプラットフォーム上のサービスの分類
TMEP § 1401.15(c)によれば、サービスは、ユーザーがオンラインで利用するという理由だけで別のサービスになるわけではありません。例えば、仮想世界を通じて提供されるオンラインバンキングであっても、ユーザーが金融取引を行い、口座を管理するものであれば、提供されるのは銀行業務です。この場合、仮想環境はサービスの提供手段にすぎません。
一方、仮想体験によって提供物の目的や性質が変わる場合は、異なる分析が必要です。例えば、ユーザーが仮想の料理とやり取りするシミュレーション型のレストランは、実際の食事や接客を提供するものではなく、娯楽体験を提供するものです。「バーチャルレストラン」と呼んでも、ユーザーに食事を提供するわけではないため、商標分類上、当然にレストランサービスとして扱われるわけではありません。
同様の考え方は、バーチャルショールームやトレーニング環境にも当てはまります。ユーザーを現実世界の商品購入につなげるショールームは、国際分類第35類の小売サービスに該当する場合があります。実際の技能を教えるトレーニングシミュレーションは教育サービスに該当する可能性がありますが、トレーニングを題材にしたゲームは、必ずしも教育サービスに該当するとは限りません。商取引、娯楽、ソーシャル交流など複数の機能を組み合わせた製品を提供する企業にとって、この区別は特に重要です。単一ブランドの仮想環境に複数の商品やサービスが含まれる場合は、それぞれの提供内容を個別に分析する必要があります。分類は、「仮想」や「オンライン」といった名称ではなく、消費者が実際に受け取る商品またはサービスの本質に基づいて判断されます。
サービス区分は機能によって決まる
ゲーム、ファッション、エンターテインメント、没入型プラットフォームなどの分野でも、商標法上、出願人は商標が何を対象とするのかをUSPTOおよび一般公衆が理解できるよう、十分に具体的な情報を記載する必要があります(15 U.S.C. § 1051(a)(2)、37 C.F.R. § 2.32(a)(6)、TMEP § 1402.01)。更新されたのはこの要件そのものではなく、デジタル商品や仮想サービスという新たな対象にも同じ要件が適用されるようになった点です。具体的には、次の事項を明らかにする必要があります
- デジタルファイルの具体的な種類と内容
- ダウンロード可能な商品か、特定のプラットフォーム内に限定されるアイテムか
- 仮想体験が実用的・機能的なサービスを提供するものか、主として娯楽を目的とするものか
製品設計上の選択が商標戦略にどう影響するか、例を挙げて説明します。
あるゲームスタジオが、プレイヤーがダウンロードして複数のプラットフォームで使える仮想アイテムを販売する予定だとします。その後、アイテムを自社ゲーム内でのみ利用できる仕様に変更すれば、その技術的な変更が商標上の分析に影響を及ぼす可能性があります。同様に、仮想ショールームを直接販売のための小売チャネルに変更したり、主に娯楽を目的とするシミュレーションに教育機能を追加したりした場合も、提供する商品・役務の性質が変わるため、商標上の評価に影響することがあります。
結論:製品アーキテクチャは商標戦略に影響を及ぼす
製品やマーケティングを担当するチームは、重要な製品上の意思決定を行う初期段階から、商標に関する検討を取り入れることが望まれます。企業は、消費者が実際に何を受け取るのか、アイテムをダウンロードまたはエクスポートできるのか、NFTがどのような役割を果たすのか、ユーザーが仮想環境内で何を行えるのかを説明できるようにしておく必要があります。これらの事実は、商品・役務の記載や分類を検討する際の重要な要素です。
こうした判断は、広告表示、消費者への情報提供、プラットフォームのルール、ライセンス契約、他の法域への展開にも影響します。商標出願書類、ウェブサイト、ユーザーインターフェース、商業契約などで商品説明が一貫していないと、後にその不整合を解消しなければならなくなるおそれがあります。製品開発の初期段階から法務・知財上の検討を取り入れることで、こうした問題を未然に防ぎやすくなります。
ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、複雑な最先端のビジネス分野において、厳選されたクライアントをサポートするWeb3企業です。ダイナミックなビジネス環境で成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要な法務サービスを提供いたします。貴社のビジネスニーズについて、今すぐご相談ください。
USPTOの分類ルール
分野 | 従来の不適切な記載例 | USPTOが求める記載 | 戦略・実務上の意義 |
NFTの特定 | トークン自体を商標の対象として記載する(例:「NFTコレクティブル」)。 | NFTによって真正性が認証される基礎となる商品を具体的に特定する(例:「NFTによって真正性が認証されたダウンロード可能なデジタル画像ファイル」)。 | 法的な出願書類、マーケティング資料、技術文書における商品説明を統一できる。 |
バーチャル商品 | 媒体や技術に基づく抽象的・包括的な表現を用いる(例:「バーチャル商品」「デジタル資産」)。 | 消費者が実際に提供される具体的な商品を記載する(例:「ダウンロード可能なバーチャル衣料品」)。 | 基盤技術ではなく、消費者が受け取る商品そのものに商標の保護範囲を明確に対応させやすくなる。 |
提供方法・ホスティング | アクセス方法にかかわらず、すべてのデジタル資産を同一に扱う。 | ダウンロード可能な商品と、プラットフォーム上で提供されるサービスを区別する。 | 商品区分(第9類)または役務区分(第41類・第35類など)の判断に役立つ。 |
バーチャルサービス | サービスの名称や外観だけで分類する(例:ゲーム内の模擬飲食店を「バーチャルレストラン」と分類する)。 | 実際に提供される行為、またはその目的に基づいて分類する(例:模擬的な食事体験を「娯楽サービス)として扱う)。 | 現実世界のサービスを模倣していても、物理的な商品や現実のサービスを提供しないバーチャル体験の誤分類を避けやすくなる。 |
知的財産戦略 | 商標出願とは切り離して、製品の仕組みや機能を開発する。 | 製品設計の初期段階から、商標分類と指定商品・役務に関する検討を組み込む。 | 権利行使上のリスクを軽減し、UI表示と法的要件との不整合を避け、各法域での出願内容を整合させやすくなる。 |
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