英国がNFTを財産と認定、米国への影響は?

英国がNFTを財産と認定、米国への影響は?

英国がNFTを財産と認定、米国への影響は?

1000 648 David Hoppe

最近、英国高等法院は、非代替性トークン(NFT)を、それらが表す原資産や オブジェクトとは別個の「財産」であると認めました。この判決は、デジタル資産やデジタルアートをめぐる紛争に大きな影響を及ぼすと思われます。更に、商標権、著作権、その他の知的財産権に関して、米国がNFTをどのように見なすのかにも影響を与える可能性があります。

背景

英国高等法院は、NFTは、それが表現する基盤となるコンテンツとは別の財産であるとする画期的な判決を下しました。これは、ラヴィニア・オズボーン(Lavinia D. Osbourne)氏のオンラインウォレットから盗まれたNFTをめぐる事件に端を発する判決です。今年初め、Women in Blockchainの創設者であるオズボーン氏は、彼女のMetamaskウォレットから2つのBoss BeautiesのNFTが盗まれたと主張しました。Boss Beautiesは、「美しく多様な、力を持った女性」の画像に関連するNFTコレクションです。オズボーン氏は、犯罪者がどのようにNFTを盗むことができたかについての詳細は明らかにしませんでしたが、トークンはその後、人気のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaに出品されました。これらのNFTは結果として、匿名のOpenSeaのアカウント保有者2名が所有することが判明しました。オズボーン氏はOpenSeaに対し、NFTの奪回を求める差止命令を申し立てました。裁判所は、Ozone Networks(OpenSeaの主催者)の口座の資産を凍結する差止命令を出し、OpenSeaに対して、盗まれたNFTを所有している2人の口座名義人に関する情報を開示するように要求したのです。

法的影響

この判決は、世界のNFT、暗号、ブロックチェーン法にさまざまな影響を与えるでしょう。

第一に、最も重要な点は、NFTがアートワーク、楽曲、ツイート、その他の「資産」とは別に、NFT自体として財産に該当するかどうかについて、少なくとも英国では不確実性が排除されたことです。この判決の意義は、NFTが銀行口座や投資口座と同様に凍結可能な資産の一種であると裁判所が判断したことにあります。しかし、本件は、NFTとその原資産との関係について裁判所が言及していないため、いくつかの曖昧な点を残しています。現状においては、NFTを単に所有するだけでは、著作権、使用権、著作者人格権、その他いかなる権利も譲渡されません。これらの権利は、書面による契約によって明示的に付与される必要があるのです。

第二に、今回の判決では、多くの暗号支持者の主張とは逆に、コードは法律ではないことが明確にされました。「コードは法律である」は暗号愛好家の間で支持された言葉で、ソフトウェアに不具合や予期せぬ機能不全があったとしても、記述されたコードは合法的な法的強制力を持つと主張をするものです。実際には、誰かがフィッシング詐欺などにより所有者の正当なプライベートキーにアクセスできたというだけで、NFTを入手したとしても、それは違法とみなされないということです。コードがその活動を可能にしたのであり、加害者はそのコードに整合し、許可された方法で行動したのであり、その権限は尊重されるべきであると主張する人もいるでしょう。しかし、高等法院は、特定のプライベートキーに対する個人の正当な主張が法的に重要であるとの見解を示しました。他の当事者がある資産を所有することができるという事実は、所有権が譲渡されること、または譲渡が許可されるべきことを意味するものではありません。

第三に、裁判所は、盗まれたNFTを含むウォレットの所有者が差止命令の発行時に匿名であったため、「不明者」に対して差止命令を発行しました。さらに、裁判所はOpenSeaに2人の口座名義人の情報を提供するよう強制し、多くのブロックチェーンユーザーが金融取引を行う際に望ましいと考える匿名性という隠れ蓑を寸断しています。

最後に、裁判所はOpenSeaに対し、NFTを移動させたり取引したりできないよう、関連する口座を凍結するよう命じました。NFTの権利者は、このような措置が知的財産権保護のための重要な方法であることを認識することでしょう。資産を凍結し、売却や追跡不可能な口座へ移すのを防ぐことで、一連の証拠が維持され、捜査官にNFTの不正流用に至った経緯を解明する時間を与えることができます。そして調査の後、法的措置を取ることができるのです。

米国の政策への影響

英国高等法院の判決は、NFTを財産と見なす米国内国歳入庁(IRS)の既存の政策を強化し、一致させるものです。内国歳入庁や学者は、NFTは従来の財産の属性をすべて備えているとの見解を共有しています。所有者は、売却、取引、譲渡することができ、また、他者がそれに関与するのを防ぐことができます。しかし、NFTの安全性を完全に別個の管轄区域で確保できるのかについては、意見が分かれるところです。ある見方によれば、英国はNFTを財産として公認したため、保有者は自分のトークンの安全性が保証され、財産が盗まれた場合には英国で法的救済を受けられます。一方、米国はNFTを財産と正式に明言していないため、誰かがウォレットをハッキングしてNFTを盗んだとしても、NFT保有者は何の救済も受けられないと指摘する専門家もいます。このため、一部の専門家は、英国がNFTの所有権保護において先行していると指摘しています。米国では内国歳入庁やその他の行政機関によると、NFTはすでに財産の地位を享受していますが、NFT保有者に財産権を付与する上で、現在の立法上の空白を埋めることはほとんどできません。デジタル資産に関する連邦法の制定が急務であり、現在、議論が進められています。

結論

この英国高等法院の判決により、NFTは財産とみなされるべきであり、したがって物理的な所有物のすべての救済と利益を受ける資格があるという重要な点が明確になりました。しかし、NFTは米国でも既に一定の文脈で財産とみなされているにもかかわらず、米国の裁判所が同様の解釈に従うかどうかは不明です。この曖昧さは、NFTプラットフォームの保護範囲を決定する上で重要な影響を及ぼします。特に、米国の裁判所が英国高等法院と同様に盗まれたNFTの保護に乗り出すかどうかも不明です。NFTを保護するための最善の法的戦略については、NFT専門の弁護士に相談するのがベストです。更に弁護士は、デジタル資産を保護するための適切な法的文書を作成することもできます。

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David Hoppe

All stories by: David Hoppe