英国の調査が示唆するリアルマネー・ゲームの将来

英国の調査が示唆するリアルマネー・ゲームの将来

Video Games Lawyer

英国の調査が示唆するリアルマネー・ゲームの将来

1000 648 David Hoppe

2020年初頭、英国政府は英国内でのリアルマネー・ゲームを規制するための全面的な規制改革を発表しました。英国賭博委員会(UKGC)は、英国の現行法はデジタルエイジには時代遅れで不適当とし、オンラインのリアルマネー・ゲーム(ポーカー、オンライン・スロットマシン、バーチャル・ビンゴ、その他カジノで行われているようなゲーム等)は、子供など弱者をターゲットとして過度の出費を扇動するものであり、またマネーロンダリングその他の英国社会に打撃を与える違法行為を助長すると結論付けました。本メッセージでは、この英国政府による法律改正案、その理由となる背景、そして特に米国やアジアといった他の地域も受けると考えられる影響を考察します。

法律改正案

英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)は規制改革過程の一環として、自由企業体制を認めながらも、これらゲームの規制によって国民の安全を守る最適な方法を見極めるため、2021年3月まで有効な情報の収集作業を行うこととしました。DCMSとUKGCは、以下4つの主な領域について調査を行います。

1. オンライン・プレイヤーおよびプロダクトの保護

オンラインでの賭博が急増する中、UKGCはプレイヤーおよび消費者、特に子供たちの安全性を危惧し、現行の規制の枠組みにおいてプレイヤーが十分に保護されているか否かを裏付ける情報を収集しています。十分であると判断できない場合、UKGCは以下のような対策を検討することとなるでしょう。

  • オンライン・プロダクトのデザイン(賭け金、スピード、賞金限度額等)および法規制の順守のための公開前テストに対するさらに厳しい規制。

  • 入金、損失、賭け金額の制限をはじめとする個人のオンライン・ギャンブル・アカウントの規制強化。

  • オンライン・プレイヤーおよびプロダクト保護という目的のため政府が利用できるよう、リアルマネー・ゲーム運営者に消費者データの引き渡しを要求。

  • ホワイトラベル協定その他のマーケティング・パートナーシップによって課されるより厳密な監視およびリスクの軽減。

 2. 広告、スポンサーシップ、ブランディング

UKGCは子供たちの安全確保をより確実なものとするため、同委員会が制定する広告規約の改正を検討しています。子供向け番組放送中はギャンブル関連のコマーシャルを放映しないというコンテンツ規制を現在設けていますが、これが不十分と考えられる場合には、以下に挙げるリアルマネー・ゲームの広告、スポンサーシップ、ブランディングの影響を考慮した上で、この規制を強化する可能性があります。

  • 認可賭博運営者に広告を許可した場合のメリットまたは悪影響。

  • 安全なギャンブルのために広告内での表示が強制されている注意書(未成年による賭博を防ぎ、またギャンブル依存者に専門家の助けを求めることを促すメッセージ)の効果。

  • スポーツ、eスポーツ、その他デジタル・エンターテインメント・メディアの賭博スポンサーシップの影響。

3. ルートボックス(ガチャ)の法的定義

2020年半ばに英国貴族院は、ルートボックスはチャンスゲームの要素があり、子供に悪影響を及ぼすとして、ルートボックスを賭博の一種として分類することを提案しました。これを受けてDCMSは、リアルマネー・ゲーム関連の法律改正過程の一環として、ビデオゲーム内のルートボックスの影響に関する情報収集を開始しました。政府がルートボックスを賭博の一種に分類した場合、スキルベースかチャンスベースかに関わらず、ゲーム開発者はルートボックスを取り除くために該当するゲームの削除または再設計を余儀なくされることとなります。

4. オンライン賭博の法定限度

現在英国ではオンライン賭博に対して法定限度が定められていません。賭博運営者がプレイヤーのアクティビティを監視し、危険または有害となりうる行為があった場合には干渉することになっているからです。しかし最近になって、短期間で失うには大きすぎる額を賭けたプレイヤーがいたにもかかわらず、サイト運営者がその行動を阻止出来なかったという事例が数件報告されています。このような行動はその個人にとってもその家族にとっても壊滅的な打撃につながるものであり、UKGCは一定レベルの賭け金額と損失額において、その支払能力の確認義務を検討せざるを得なくなりました。オンライン・ギャンブラーを段階的に保護することが目的です。また調査情報に基づいて支払い能力に応じた法定限度が設けられる可能性もあります。

これらの新しい規制案に加え、UKGCは2020年半ばに未成年ギャンブラーを守るための法改正を発表しました。UKGCによると、11歳から16歳の子供450,000人が日常的にギャンブルを行っています。そこでカジノゲーム利用の際の未成年者による年齢制限逃れを防ぐため、身分証明書を求めて逐一手作業で顧客の確認を行うよう、オンライン・プラットフォーム運営者に求めたのです。さらにUKGCは英国のギャンブラーが多額の負債を抱えるのを防ぐため、クレジットカードの利用に制限を設けました。これらの規定は2020年4月に施行されています。

スキルベースのカジノゲームの人気が急上昇している中、運に任せたチャンスゲームのみならずスキルベースのゲームにも規制改正案が適用されるか否かは興味深いところです。スキルベース・ゲームの中にはルートボックスを提供し、ゲーム内リワード獲得のチャンスを増やすための出費に顧客を誘い込むものもあるため、いずれにしても、ルートボックス規制はスキルベース・ゲームにも影響すると考えられます。

賭博運営者への影響

現在UKGCが調査を行っていることから2021年は新たな制約が数多く加えられると予想され、改革案は賭博運営者やプラットフォーム事業者らの憂いの種となっています。これら賭博サイト、プラットフォーム、開発者、仲介者は、以下のような事業活動に影響する法令に対して準備を整えておく必要があるでしょう

  • 加入期間や賭け金額を基準としたロイヤルティ・プログラムおよびカジノVIPプログラムに対する制限。
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  • 適当な段階で支払能力を確認するため、GAMSTOP等信頼できるツール提供義務。

  • 賭博運営者が破産しても顧客が資金を取り戻せるよう、事業体の運営口座と顧客のデポジットや獲得金を別々に管理する義務。

  • オンライン広告の制限。

  • 支払形態としてのブロックチェーンや暗号通貨利用に対する規則。

その他地域への影響

英国における法律改正は、他の地域でのリアルマネー・ゲームやチャンスベース賭博の管理方法にも影響することが予想されます。あまりに制限が厳しすぎれば、英国、米国、アジア等から賭博運営者がその営業拠点を外国に移してしまうことにもつながるでしょう。さらにその他の地域でも、未成年者のギャンブル、ルートボックスの法律上の定義、オンラインの賭博広告、リアルマネー・ゲームにおける仮想通貨の使用に関して同様の問題に直面し、その対処のために同様の法改正の必要に迫られることになります。例えば、ニュージャージー州では未成年者の賭博を阻止するため厳しい法令が制定されているにもかかわらす、21歳未満のギャンブラーたちがこの法律を回避できてしまっている例が少なくありません。このためギャンブラーの身元確認をさらに厳しくするという動きがみられています。同様に米国ではある種のルートボックス、特に子供をターゲットとしているルートボックスを禁止すべきという声が上がっており、さらにベトナム、シンガポール、インドでもルートボックスの規制が求められています。

結論

英国におけるリアルマネー・ゲーム法の改正は、2021年半ばまでには完了する見込みです。実際に改正が行われるまで、その改正内容と適用範囲は明確ではありません。ただひとつ確実なのは、チャンスゲームとスキルベース・ゲーム両方のリアルマネー・ゲーム運営者およびプラットフォームにとって、追加規制が今後障害となるということです。そしてこのような法的ハードルへの対応をお手伝いできるのは、リアルマネー・ゲームの法律問題の経験を持つ弁護士です。

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David Hoppe

All stories by: David Hoppe