規制当局はNFTを証券として扱う方向へ傾くか?

規制当局はNFTを証券として扱う方向へ傾くか?

規制当局はNFTを証券として扱う方向へ傾くか?

1000 648 David Hoppe

米国やその他の諸国における最近の法的動向は、最終的にNFTを有価証券として分類する方向に傾いているようです。この傾向が続けば、こうした判決や規制は、ゲーム業界及び近い将来NFTの立ち上げを目指す新興技術企業にとって重要な影響を与えることは間違いないでしょう。 

背景

NFTが誕生して以来、法執行機関、徴税機関、金融規制当局がNFTをどのように扱うべきかが、常に議論の的となってきました。NFTは所有できるため、私有財産な のでしょうか?創作されたものだから芸術品なのでしょうか?多くの市場で自由に売買できるため、商品なのでしょうか?また、購入価格よりもはるかに高い価値を生むことが多いことから、投資に該当するのでしょうか?NFTを含むあらゆるデジタル資産は、米国証券取引委員会または他国の同様の規制機関によって「証券」として分類される可能性があります。米国では、ある裁判により、NFTは有価証券に該当し、金融商品に対して定められた規則に準拠しなければならないとの判例が示されました。

米国最高裁は、アメリカ証券取引委員会対W. J. Howey社事件 において、暗号通貨やNFTなどのデジタル資産が「証券」や「投資契約」とみなされるかどうかを判断するための4つの要素を提示しました:

  1. 資金を集めているか
  2. 共同事業であるか
  3. 投資家が利益を得ることを期待しているか
  4. 第三者の努力によるか

この4つの条件を満たすNFTは、米国では証券として扱われる可能性が高いでしょう。NFTの規制の第一義的な責任は、連邦証券法に基づく証券取引委員会(SEC)および商品先物取引委員会(CFTC)が担っています。さらに、各州には独自の証券法があり、連邦証券法とは異なる、または追加的な要件が存在する場合があります。

NFTやその他のデジタル資産が証券の世界に入り込む場合に備えて、規制当局や民間人が、より明確な定義づけを行う態勢を整えています:

  • NBA Top Shot Momentsをめぐる訴訟
    あるバージニア州民が、NBA Top Shot Momentsの購入者に代わって集団訴訟を起こしました。この訴訟は、NFTのクリエーターであるDapper Labs社とNBAが 「未登録の証券 」をマーケティングし販売したことを非難しています。原告は、NBA Top Shot Moments(デジタルビデオ・バスケットボール・カード)はHoweyテストに該当せず、ゆえに1933年証券法の適用を受けるべきであると主張しています。これに対しDapper Labs社は、同社のデジタル・バスケットボール・カードは他のスポーツ・トレーディングカード、コイン、切手と同様に単なる収集品であるとして、マンハッタンの裁判所に訴えの却下を求める申し立てを行いました。この訴訟は現在係争中であり、最終判決は、NFTの証券としての法的位置づけに関する多くの問題に焦点を当てることになると思われます。
  • NFTの違法な売り出しに対する証券取引委員会の調査
    今年の半ば頃、証券取引委員会はNFTの作成者と暗号取引所に対して証券違反の有無を精査するようになりました。この監視の目的は、特定のNFTが従来の有価証券のように資金調達に利用されているかどうかを確認することにあります。証券取引委員会は、特にNFTのフラクショナル・オーナーシップに関心を持っており、これは企業やプロジェクトの株式所有とよく似ていると考えています。ニュージャージー州に拠点を置く暗号融資会社BlockFiの主要なビジネスモデルは、より価値の高いNFTの小口販売です。証券取引委員会は、同社が「高利回り」融資商品を証券として登録していなかったとして、過去最高額の1億ドルの罰金を支払うよう命じました。証券取引委員会のゲーリー・ゲンスラー委員長は、暗号市場に存在する約1万個のトークンの「大部分」を証券として位置づけたことから、今後、さらなる措置が講じられる可能性があります。
  • OpenSeaの元幹部に対する訴訟
    OpenSeaの元幹部ネイト・チャステイン(Nate Chastain)氏がインサイダー取引で起訴されました。インサイダー取引とは、専有情報を使って会社の株式やその他の証券を売買したことで告発された人たちに使われる用語であり、犯罪です。米司法省(DOJ)がチャステイン氏をインサイダー取引で起訴しようとしたのは、実はOpenSeaのマーケットプレイス上のNFTの少なくとも一部を証券と見なそうとする試みだったと言えるでしょう。OpenSeaは、同プラットフォームのNFTについて話す際には、「取引」や「デリバティブ」といった証券関連用語を使用しないように従業員に指示しています。
  • Yuga Labs社、集団訴訟の危機にさらされる
    Bored Ape Yacht Club(BAYC)のクリエーターであるYuga Labs社は、投資家にBAYCの NFTとApeCoinを「不適切に誘導した」とされ、集団訴訟の危機にさらされました。ある法律事務所は、Yuga Labs社は有名人のプロモーターや推薦を利用して、ハイリターンを過剰に約束することでNFTの価格をつり上げたことは、米国証券法に違反していると主張しています。
  • サンドベガスカジノクラブの規制措置
    2022年4月、テキサス州とアラバマ州の証券規制当局は、キプロスに拠点を置くバーチャルカジノ開発会社サンドベガスカジノクラブ(Sand Vegas Casino Club)に対し、そのNFTが未登録証券であるとして販売停止命令を出しました。両州は、同社がメタバースとオンライン・ギャンブルサイトで消費者と潜在的投資家にNFTを販売する際に、物理的な住所の登録、カジノ運営のリスクに対する警告、州へのNFTの登録などいくつかの重要なステップを怠っていたことを明らかにしました。
  • 暗号法案の提出
    2022年6月、米国上院議員は、暗号通貨に関する新たなルールを求め、NFTを規制する責任の大部分を商品先物取引委員会に委ねる超党派の法案を提出しました。法案の起草者は、暗号通貨は証券としてよりも商品として運用される可能性が高いと考えているため、法案が通過すれば、証券取引委員会ではなく、商品先物取引委員会が暗号商品の規制を担当することになります。

こうした法的な動きは、米国で特定のNFTを証券に分類する動きが活発化していることを示唆しています。NFTが法的に有価証券として位置付けられると、米国証券法への準拠が必要となるため、ビデオゲーム業界やNFTの販売を計画している新興テクノロジー企業に大きな影響を及ぼします。米国証券法に基づく規制は非常に厳しいもので、コンプライアンスに違反すると、重い罰則が課されることもあります。NFTプロジェクトに着手する前に、NFTの証券としての法的な位置づけについてNFT専門弁護士に相談することが最善策です。そうすることで、将来的な法的リスクを回避することができます。 

ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、最先端のビジネス分野で選ばれたクライアントをサポートする法律事務所です。複雑でダイナミックなビジネス環境において成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要なサポートをクライアントに提供しています。お客様のビジネス・ニーズについて、今すぐご相談ください。

Author

David Hoppe

All stories by: David Hoppe