進化し続けるEスポーツ法

進化し続けるEスポーツ法

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進化し続けるEスポーツ法

1024 664 David Hoppe

Eスポーツは、他のプロスポーツと多くの重要な点で異なりますが、法律の観点から見て最も注目すべき点は試合にオーナーがいることです。通常のスポーツの場合、誰もプレイヤーの決定権を主張できません。誰もがすぐに立ち去ることができ、また特に許可もなく、 独自のルールでタッチフットボールやワンオンワンバスケットボールを楽しむことができます。しかし、 Eスポーツのビジネスやプロフェッショナルな面で関わりたい場合、選手、チーム、ゲーム開発者、スポンサー、投資家、そしてファンはゲーム所有権の条件を守る必要があります。

この違いが、ビデオゲームの知的財産権の所有者、つまりパブリッシャーに、誰がどのようにゲームをプレイするのかについて大きな影響力を与えます。ライセンス許可の可否や誰にライセンスを与えるのかを決められる上、トーナメントの組織や運営方法を指定したり、そのパブリッシャーのゲームを使用したトーナメントでの賭博の許可や禁止もできます。

知的財産権

これらの知的財産権やその放棄及び譲渡のための交渉条件の実施は、Eスポーツ法の大部分を占めます。著作権はビデオゲームやゲームプレイの複製や不正使用を防ぎます。ゲームパブリッシャーにとっては、キャラクター、プロット、またはコードを使用したいのであれば、必ずライセンスを取得する(またはライセンス料を支払う)ようにさせることができます。Eスポーツ界では、これがトーナメントの主催者やリーグ、またエンドユーザー契約次第ではプレイヤーにまで適用されます。法律問題は複雑化し、著作権保護はプレイヤーや彼らのゲームプレイにまで及びます。歌手が人気の歌を演出する場合と同様に、Eスポーツ選手が自分のゲームプレイを動画配信すると新しいコードが発生するため、クリエイティブなパフォーマンスだと認識されることもあります。

一方、商標はブランドを保護するもので、ライセンスのない企業が許可なくロゴやイメージを使用すること禁じています。例えば、配管工がスーパーマリオを使用して自分のビジネスを促進することはできません。Eスポーツプレイヤーもまた自分のブランドを商標化することができます。特定のプレイヤーを象徴するゲーマータグは、商品やサービスに関連づけられた場合、コモンロー商標と見なすことができます。適用される国の法律によっては、チームやプレイヤーは自分たちの商標を登録することができます。

パブリッシャーは自社のゲームの完全性と評判を守るために多大な努力を払います。Riot Gamesは外部エージェンシーの利用を避け、自ら『リーグ・オブ・レジェンド』のトーナメントを開催していますが、パブリッシャーはトーナメントのオペレーターに自身のゲームをライセンス化することが普通です。ライセンス契約には、トーナメントによるイベントの促進方法、競技方法、ゲーム予定、ルール、そして、もちろん主催者がライセンス料をいくら支払うのかなどの条件が細かく記さています。また、メディア化、商品化、放映権などの所有者にまで渡っています。

プロモーション

急激に伸び続けるEスポーツの人気は、広告主にとって膨大なプラットフォームとなり、選手、チーム、メディア会社、トーナメント管理者にさらなる収入源をもたらしています。Eスポーツが生み出す収入の40%がブランドスポンサーシップによるもので、これが業界最大の収入源になっています。ビデオゲーム業界或いは他の業界で経営する企業も、リーグ、トーナメント、チーム、そして個人プレイヤーのスポンサーとして何十億ドルも投資し、自分たちの商品をEスポーツ観戦者に見てもらおうとしています。

これらの契約を結ぶにあたり、企業はブランドと評判を守る手順を踏まなければなりません。契約には、金銭面や契約期間の条件だけでなく、パートナーによる競合ブランドの使用や推奨、解約条項なども明記しておくべきです。権利者は、悪評の高いEスポーツ選手による不利な発言などを考慮し、見込みのあるパートナーに対してデューデリジェンスをおこなうべきです。

プレイヤーとスポンサーは、相反する可能性のある金銭関係や利益を開示し、両者の関係性を明らかにする必要があります。フォロワーの多いゲーマーはインフルエンサーとしての地位を収入化できますが、製品やサービスを試したり宣伝保証する見返りに受けるあらゆる報酬を開示しなければなりません。例えば、直接的な現金支払いや報酬、無料商品(良い評価をする保証がない場合でも)、割引、贈答品、無料コンテストやステークス方式への参加、雇用関係などです。

ゲームプレイ、個性、外観がインフルエンサーとしての資格を満たすEスポーツプレイヤーは、トーナメントよりも保証宣伝による収入の方が多い場合もあります。ブランドの権利保有者は、写真、肖像、名前、および・または製品やサービスに関連する言葉の使用料をプレイヤーに支払います。プレイヤーとその弁護士は、保証宣伝の契約に、支払額と支払い時期、どの国で保証宣伝をするのか、そしてブランドがそれを利用する期間が明示されていることを確認すべきです。また、選手の条件も提示する必要があります。製品についての肯定的な発言の録音や録画、企業イベントへの出演、ブランドアパレルの着用、権利保有者の製品の使用が独占的であるかどうかなどです。プレイヤーは通常、チームの保証宣伝契約の条件遵守し、その契約と利益が衝突するような契約を結ばないようにしなければなりません。例えば、コカコーラ社がスポンサーになっているチームのプレイヤーはペプシの保証宣伝はできません。

メディア

Eスポーツのファンダムへの興味が高まるにつれ、特に注目されるトーナメントの放映需要が出てきました。インターネットによる動画配信から熱狂的なテレビ放映、そしてESPNやワーナーメディアのようなケーブルネットワークまで、さまざまなメディアがこれらのイベントを放映し、広告収入を手に入れようと競い合っています。これには、トーナメントの主催者とゲームの知的財産権所有者の両者からの許可が必要となります。

地域、イベント、その他の要因によっては、トーナメント放映の焦点になったプレイヤーは、競技条件としてパブリシティー権の放棄を求められることもあります。この放棄により、トーナメントの主催者は、有名なゲーマーが出場するという触れ込みでイベントを促進できます。放棄はイベントを放映しているメディア代理店にまで及ぶと思われます。保証宣伝とパブリシティー権はしばしば重複します。こうした種類の法律問題は、一流のEスポーツ選手がTwitch独占で動画配信したり、競合プラットフォームで動画配信するために巨額の契約にサインした場合などに、真っ先に浮上してきます。

人材

Eスポーツのトップ選手たちは、通常彼らに報酬と実績に応じた賞与を支払ってくれるチーム組織を代表して競技します。他の社員と同じように、チームは実地訓練、そして食事や無料の住宅もしくは優良賃貸住宅などを含む手当も提供してくれます。これらはすべて連邦政府や州の労働法に準拠していなければなりません。プレイヤーを社員ではなく独立契約者に分類した方がチームにとって良い場合もありますが、そうすると「従業員」として課すことのできる要求が制限されます。

従来のプロスポーツとは対照的に、現在のEスポーツのチームオーナーは、プレイをしてくれるプロゲーマーに対して大きな影響力を持っています。こうしたゲーマーは、大抵は経験の浅い若者で、専門のEスポーツ弁護士が提供できる恩恵を知りません。精力的なチームオーナーは、チームが非常に得をするような契約条件を課して、プレイヤーを利用しようとします。例えば、プレイヤーの現在の(潜在的なものではなく)市場価値に基づいた、長期的な支払い計画などです。将来有望なプレイヤーにとっては、より多くのトーナメントに勝ってファンが増えたら、その才能を引き合いにかけられる自由契約選手になれるような短期契約を好む場合もあります。

  • 移民 — Eスポーツは真に国際的なビジネスです。世界各国にチームがあり、トーナメントが開催されています。チームはプレイヤーが旅行する際に査証を取得したり、必要に応じて海外に居住して働けるように移民ビザを取得する手助けもできます。
  • 就労許可 – 米国チームへの参加を望む外国人メンバーは、Q-1Aビザ(特殊な能力や実績を持つ人々が対象)、EB-1A(永住者)、またはP-1Aビザ(プロまたはアマチュアのスポーツ選手)取得の資格があります。P-1Aなら、プレイヤーは最高で5年間まで国内に滞在し、報酬と賞金を得て競技をすることができます。

財務

Eスポーツは巨大ビジネスに成長しており、その勢いは衰えそうにありません。広告、メディア、イベント管理、ゲーム開発、その他の関連する多くのニッチな分野での利益の可能性に魅了されたベンチャーキャピタリストやその他の投資家の興味をそそっています。Eスポーツ産業はダイナミックに進化しており、将来性のあるスタートアップ、大規模な合併や吸収が新たな展開を後押ししています。

  • 投資 Eスポーツに絡む特殊な問題、機会、状況に関しての経験が深く、優れた経済的な洞察力を持つEスポーツ専門の弁護士なら、投資収益率を最大化するためにどのような位置付けをしたら良いかを潜在的な投資家に助言できます。チームの所有権やスポンサー、メディア、商品化、プレイヤー代表、ブランディング、イベント管理、ゲームやプラットフォームの技術、ゲーム開発、そしてパブリッシングなどは、成長や統合でチャンスを得ている分野のほんの一部にすぎません。

Huyaは、最近同じ中国のゲーム動画配信会社のDouYu・インターナショナル・ホールディングスの全株買収に同意し、市場価値110億ドルの巨大企業を築きました。テンセント・ホールディングスは合併後の議決権付き株式のおよそ3分の2を保有することになり、Twitchにおけるアマゾンと同様の位置付けになります。合併吸収の需要が価格や評価の上昇を激化しており、このままでは維持できないと考えるオブザーバーもいます。2007年の米国の住宅市場や17世紀のオランダのチューリップバブルと同じく、バブルがはじける可能性があります。今すぐに起こるとは思えませんが、チームオーナー、アドバタイザー、ゲーム会社の後援者、その他の関係者はそうしたリスクを軽視すべきではありません。毎日新しい媒体が生まれている状況では、Eスポーツが提供するプロモーションその他のプレイ以外の機会への参入を望む場合、会計士、弁護士、コンサルタントなどの専門家のサポートを求めるべきです。リスクや見返り、規制、思わぬ落とし穴の可能性について学ぶことで、将来を見据え、どのように投資すべきかを知ることができます。

イベント管理

プレイヤー、プロモーター、観戦者からの莫大な関心がアリーナ運営者の新たな収入源となり、これを受けてアリーナ以外のスペースもEスポーツイベントができるように改修したり、Eスポーツ大会の開催と放映のために新しい会場の建設も進んでいます。北米最大のEスポーツ専用設備であるテキサス州のEsports Stadium Arlingtonは、10万平方フィートの広さで2500人のファンを収容できます。完成間近のフィラデルフィア州のFusion Arenaの収容人数は3500人です。その他の小規模なアリーナ的な空間もショッピングモール、カジノ、そしてEスポーツ選手に奨学金を支払う大学が増えているので大学のキャンパスとして次々とオープンしています。

拡張が続くにつれ、Eスポーツと法律の接点も増えて来ます。プレイ、トーナメント、そして放映設備を経営する企業は、貸主とテナントの関係、新型コロナウイルスによる特定の収容人数や衛生規則、建築法、ゾーニングなどを含む問題に関する法的なサポートを必要としました。地域ベースのエンターテインメント会場が食事やアルコール飲料を出す場合、食品取り扱いや年齢制限のガイドラインを満たさなければなりません。法律や規制が進化し続けるにつれ、Eスポーツ管理者は法律で求められる規則に遅れを取らないようにし、それらを適用して、スポーツの完全性と公平性を維持しなければなりません。最も信頼の高いリーグでさえもこれらの問題に悩まされている状況では、リソースが限られた小規模な組織がモニタリングとデューデリジェンスのサポートを必要とするのも当然と言えます。

  • 不正 — リーグ、チーム、トーナメントは、特に賞金がかかった試合に関しては、絶対に不正を許すべきではありません。ハッキングや共謀は検知が難しく、不正を逃れられる可能性に誘惑されるプレイヤーもいます。権利者は今後のトーナメントに対して自動的な出場停止や民事訴訟、或いは刑事訴追さえも導入して、不正をできる限り実行価値のない行為にしなければなりません。今年の初め、フォーミュラEレースは、ドライバーの一人であるダニエル・アプト(Daniel Abt)の成績が急に伸びたのは、Eスポーツレーサのロレンズ・ホーチング(Lorenz Hoerzing)が替え玉になってアプトのeカーを操作していたためであることを発見しました。他の競技者達は早くからアブトが替え玉を使っているのではないかと疑っており、お粗末な計画はすぐに発覚しました。
  • 賭博 — スポーツには賭博がつきものです。プレイヤーとチームは、それを超える金額を手にできる可能性にかけてエントリー料を支払い、トップの成績で試合を終えられると言う自らの能力に賭けます。結果によって損得が決まる場合、観客の関わり具合も高まります。スポーツ賭博禁止が解禁になった今、複数州の企業が競馬場、カジノ、スポーツバーなどにスポーツくじのキオスクやスポーツブックを設置しています。オンラインサービスでは、シーズンを通して、或いは毎日ファンタジーリーグやコンテストが提供されています。賭博は不正の大きな原動力となり、トーナメントの主催者にとって深刻な責任問題の発生する分野です。専門の弁護士なら、地方及び連邦政府の規制準拠や公正なプレイを保証し、すべてのEスポーツ関係者がリスクを最小化してEスポーツにおける賭博問題を回避できるようお手伝いできます。
  • PED(運動能力向上薬) — トーナメントやリーグは、運動能力向上物質や薬物検査に関する特定の規則や手順を提供すべきです。Eスポーツ選手の中には集中力や反射能力を増すために天然ミネラルやサプリメントを利用する選手もいますが、通常、処方薬または違法薬物の使用はトーナメントでは厳しく禁止されています。弁護士は、プレイヤーが摂取しても良い物質、規則違反になる物、検査方法、違反した場合の罰則の設定、プレイヤーの訴訟方法、その他の厄介な問題を主催者が判断する際のお役に立ちます。

結論

現在、世界中に5億人の観戦者を持つEスポーツは、毎年10億ドル以上の収入を生み出しています。そして、今後数十年でこの数字は数倍に成長すると予測されています。多くの問題や技術に影響を与え、かつそれらに影響される産業においてこれだけの金額が関わるとなると、Eスポーツが現在だけでなく今後も法的問題の温床であり続けることは疑いありません。Eスポーツ法は複雑で重要な分野であり、この産業に関わるすべての人々が意識を高め、必要に応じて質の高いサポートを求めるべき分野です。

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David Hoppe

All stories by: David Hoppe