生成AIは、完成度の高い文章、画像、コード、音楽、動画を生成できます。しかし、商業的に利用できることだけをもって、著作権の帰属が認められるわけではありません。
Thaler v. Perlmutter, 130 F.4th 1039(D.C. Cir. 2025)において、米国コロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所は、米国著作権法が制定法上の要件として人間による著作者性を求めていると判示しました。AIシステムのみによって創作されたとされる著作物は、米国における著作権登録の対象となりません。もっとも、同裁判所は、関連する二つの論点について判断を示していません。第一は、合衆国憲法自体が独立して人間による著作者性を要求しているかどうかです。第二は、システムを構築・運用したことを理由に、Thaler本人が著作者と認められ得るかどうかです。なお、後者の主張は、米国著作権局における手続で放棄されていました。
この原則には重要な限定があり、D.C.巡回区連邦控訴裁判所はこれを明示しています。すなわち、人間による著作者性の要件は「人工知能によって、または人工知能の支援を受けて作成された著作物に著作権を認めることを妨げるものではない」とされました。
したがって、AIの支援を受けた作品に組み込まれた人間の創作的表現は、著作権保護の対象となり得ます。また、AI生成素材についても、人間による十分に創作的な選択、配列、編集または改変が認められる場合には、その部分について著作権が成立し得ます。
プロンプトの入力だけでは、通常、この水準の著作者性を安定的に立証することはできません。著作権局は、「現在一般に利用可能な技術の機能に基づく限り」、プロンプトのみでは、システムが生成する表現について利用者が十分な統制を及ぼしたとはいえないと結論づけています。ただし、この見解を将来にわたって固定されたルールと理解すべきではありません。著作権局は、その結論を現在の技術的能力に紐づけて示しているためです。一般に、著作権保護が認められやすいのは、人間の創作者が最終的な表現作品に対して、実質的な改訂、選別・編集、複数要素の組み合わせ、その他の具体的な方向づけを行っている場合です。
企業にとっての実務上の帰結は明確です。AI生成物の作成を委託し、プロンプトを入力し、または対価を支払ったというだけで、その成果物を当然に「自社が所有するもの」と説明すべきではありません。むしろ、素材および成果物を次のように区別して整理する必要があります。
営業秘密、秘密保持上の利益、商標、先行者利益:著作権が認められない場合でも、なお商業的価値を生み得るもの
- 純粋なAI生成物:著作権による保護を受けられない可能性があるもの
- 人間による入力、編集および編集著作物:著作権による保護を受けられる可能性があるもの
- プラットフォーム、顧客およびベンダー間の契約上の権利:利用権の配分は可能だが、法律上著作権が認められない対象について、契約によって著作権を創設することはできないもの
- 営業秘密、秘密保持上の利益、商標、先行者利益:著作権が認められない場合でも、なお商業的価値を生み得るもの
大規模言語モデルの時代におけるフェアユース
著作権で保護された資料を用いて生成モデルを学習させる行為の法的位置付けは、依然として未確定です。裁判所は、AIの学習が常にフェアユースであるとも、常に侵害であるとも判断していません。ここでは、実際に判断が確定した範囲がいかに限定的かを正確に把握しておく必要があります。この問題に関する米国のこれまでの判断は、すべて連邦地方裁判所によるものです。最初の控訴審であるThomson Reuters Enterprise Centre GmbH v. Ross Intelligence, Inc.は、2026年6月11日に第3巡回区連邦控訴裁判所で弁論が行われ、現在も係属中です。著作権で保護された著作物を用いたAIモデルの学習がフェアユースに該当するかを判断した連邦控訴裁判所の判例は、まだ存在しません。
最高裁判所によるAndy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. v. Goldsmith, 598 U.S. 508 (2023) の判決は、依然として重要です。同判決は、「変容的(transformative)」な目的を主張しただけでは検討が終わらないことを改めて示したためです。裁判所は、営利目的や、原著作物の現実のまたは想定される市場への影響を含め、問題となっている具体的な利用を検討しなければなりません。もっとも、Warholは、写真に基づくシルクスクリーン肖像画のライセンスに関する事件であり、AIに関する事件ではありません。また、同判決は、クリエイターや原資料と競合するAI製品が当然にフェアユースの保護を失うというルールを確立したものでもありません。
2025年の学習関連判決は、この法理が事実に依存する性質のものであることを示しています。Bartz v. Anthropic PBC, 787 F. Supp. 3d 1007 (N.D. Cal. 2025) において、オルサップ裁判官は、略式判決で、適法に取得した書籍を用いたLLMの学習は、当該事案の事実関係の下では「際立って(spectacularly)」変容的なフェアユースであり、購入した紙の書籍を内部ライブラリ用にデジタル化する行為もフェアユースにあたると判断しました。他方で、汎用的な中央ライブラリを構築するために海賊版ソースからダウンロードした複製物については、逆の結論を示しました。同裁判官は、法定の4要素のすべてがフェアユースに不利に働くと認定し、故意の有無を含め、実損害および法定損害賠償に関する審理を命じました。この請求は公判に至らず、当事者間で和解が成立し、2026年7月20日、裁判所は15億ドルの和解を最終承認しました。これは米国の著作権訴訟史上最高額であり、海賊版ライブラリから取得された約50万件の著作物を対象とするものです。
この区別は重要であり、和解額は、判決文以上にその点を強く裏付けています。企業の法的リスクは、どのようなデータを用いたかだけでなく、そのデータをどのように取得し、複製し、保持し、利用したかによって左右され得ます。考慮要素としては、取得方法、利用の営利性、現実のまたは想定される市場への損害を示す証拠、利用可能なライセンスの枠組み、適用される契約上の制限、そしてモデルが生成する出力が挙げられます。
政府の立場も固定的ではありません。2026年9月1日、米国政府は、OpenAIを被告とする併合された著作権訴訟において、著作権で保護された著作物を用いた大規模言語モデルの学習はフェアユースにあたるとする利益陳述書(statement of interest)を提出しました。政府は、当該利用を高度に変容的であると位置付け、広範なライセンス取得義務を課せば既存の有力事業者を固定化することになると警告しています。利益陳述書は主張であって法的権威ではなく、政府がOpenAIと並行して商業的取引を行っていることから批判も受けています。しかし、この分野で訴訟リスクを評価する企業にとっては、重要な進展です。
「直接的な競合はフェアユースを否定する決定打である」という主張は、この法理を誇張したものです。直接的な市場代替はフェアユースに強く不利に働き得ますが、それは文脈依存的な分析における一要素にすぎず、自動的なルールではありません。企業は、ライセンス済みコーパスが不可欠だとする根拠にこの点を援用するベンダーと、譲歩を引き出すためにこれを持ち出す取引相手方の双方に、注意すべきです。
出力、再現、および責任
学習データに関する請求と、出力による侵害に関する請求は、同一の論点として扱うべきではありません。
学習に関する請求では、モデルの開発または改良のために著作物を複製することが法的に許容されるかが問われます。これに対し、出力に関する請求では、特定の生成結果が保護された表現を再現しているか、著作物と実質的に類似しているか、あるいは利用者による侵害を引き起こし、または助長しているかが問われます。同一のAIシステムであっても、これらの点について、実質的に異なるリスクが生じ得ます。
OpenAIおよびMicrosoftに対するNew York Timesの訴訟は、同紙コンテンツを用いた学習に関する主張と、保護された記事を再現しまたは代替するとされる出力に関する主張の双方を含むため、引き続き重要です。New York Times Co. v. Microsoft Corp., 777 F. Supp. 3d 283(S.D.N.Y. 2025)において、裁判所は、直接侵害および寄与侵害の請求について審理の続行を認める一方、コモンロー上の不正流用による不正競争の請求を再訴を認めない形で棄却し、DMCA第1202条に基づく請求の大部分も棄却しました。これらの判断は、本案を解決したものでも、AIの学習に関する一般的なルールを確立したものでもありません。その後の手続で、事件はさらに絞り込まれています。2026年8月、ニュースメディア側の原告らは、残存していた「重要な寄与(material contribution)」に基づく寄与侵害請求および商標希釈化請求を、再訴を認めない形で取り下げました。また裁判所は、Microsoftに対する新たな寄与侵害理論の追加を認めませんでした。
AI関連訴訟全体における二次的責任の枠組みは、その後、Cox Communications, Inc. v. Sony Music Entertainment, No. 24-171(米国最高裁判所、2026年3月25日)によって再構成されました。同判決で最高裁は、10億ドルの寄与侵害責任を認めた原判決を破棄し、サービス提供者が寄与侵害責任を負うのは、当該サービスが侵害に利用されることを意図していた場合に限られると判示しました。この意図は、積極的な侵害誘引か、侵害に適合するよう作り込まれたサービスによって示されます
企業は、記憶内容の再現および逐語的な再出力(regurgitation)を、具体的な運用上のリスクとして扱うべきです。これは、モデルが重複する表現、事実、一般的な定型句、保護されないアイデアを一切生成してはならないという意味ではありません。求められるのは、特定の記事、書籍、コードリポジトリ、歌詞、画像その他の識別可能な著作物を狙ったプロンプトに応じて、保護された素材がほぼ逐語的に、または実質的に類似した形で出力される可能性を低減するよう、システムを設計し、検証することです。
有効な管理策としては、次のものが挙げられます。
- 記憶内容の再現およびほぼ逐語的な再出力を検出するレッドチームテスト
- 特定の著作物を対象とするリクエストに関するプロンプトおよび出力ポリシー
- 相応の根拠のある侵害申立てに対するエスカレーション手続
- システムのリスク・プロファイルに応じた、モデル、データセットおよびベンダーに関する文書化
- 実質的なレビューを経ない出力の自動公開など、高リスクの利用形態に対する制限
- 商業公開、顧客への提供、本番環境への導入を予定する素材に対するレビュー・ワークフロー
これらの管理策はリスクを低減しますが、侵害がないことを保証するものではなく、それ自体でフェアユースの成立を基礎づけるものでもありません。
データの来歴管理とガバナンス
企業は、事後的な是正対応から、先を見越したAIガバナンスへと移行すべきです。すべてのAI開発者に対し、学習に用いる全資料についてライセンスを取得すること、包括的なデータ構成表(data bill of materials)を整備すること、または各データセットについて完全な管理経路(chain of custody)を開示することを義務付ける一般的な連邦法は、現時点で存在しません。適切な状況では、なおフェアユースが認められる余地もあります。もっとも、この連邦レベルの整理だけでは、現在の法的環境の全体像を捉えられません。カリフォルニア州の「生成AI学習データ透明性法」(AB 2013)は2026年1月1日に施行され、同州の利用者に一般提供される生成AIシステムの開発者に対し、各学習データセットについて、次の事項を含む概括的な概要の公表を義務付けています。
- データの出所
- 著作権の対象となる資料またはライセンスを受けた資料が含まれているかどうか
- 個人情報が含まれているかどうか
- データポイントの数
- データの収集期間
- 合成データが使用されているかどうか
同法に対する異議申立ては、X.AI LLC v. Bonta, No. CV 25-12295(C.D. Cal. Mar. 4, 2026)において予備的差止命令の段階で退けられ、同法は現在も効力を有しています。同法には明示的な罰則規定や私的訴権は設けられておらず、カリフォルニア州はこれまで執行メカニズムを示しておらず、同法に基づく執行事例も生じていません。もっとも、同州の利用者にサービスを提供する企業は、連邦法上の一律の義務がないことや、最初の執行事例がまだないことをもって、義務が存在しないと判断すべきではありません。
いずれにせよ、ライセンスの取得、来歴の記録、データソースの制限、契約上のコンプライアンス確保は、法的不確実性を大きく低減し得ます。とりわけ、価値の高いコンテンツ、専有コンテンツ、ペイウォールで保護されたコンテンツ、その他の利用制限があるコンテンツを扱う場合に、その意義は大きくなります。優れた実務対応は、一律かつ絶対的な措置ではなく、リスクに応じた比例的なものです。
- 主要な学習データの分類と出所を特定する。
- 取得済みのライセンス、許諾、利用制限、オプトアウト、契約上の制約を記録する。
- 適法に取得した資料と、出所が不明確または禁止されている資料を明確に区別する。
- 専有コード、ペイウォールで保護されたコンテンツ、個人データ、営業秘密、海賊版関連の情報源から取得した資料について、追加的な審査を実施する。
- ベンダーの表明事項、補償義務、技術的安全措置、データ利用方針を文書化する。
- 権利者からの申立て、削除要請、記憶内容の再出力を示す証拠への対応手続を整備する
企業は、「オープンソース」ソフトウェアを無制限に利用できるものと捉えるべきではありません。ライセンスによって課される義務は異なり、通知、帰属表示、ソースコードの開示、特許、頒布などに関する条件が定められている場合があります。これらの義務が特定のAIワークフローに適用されるかどうかは、ライセンスの内容、対象コードの性質および利用方法、さらに保護されたコードが頒布される出力に含まれているかどうかによって判断されます。加えて、ソースコードの入手可能性に関する対外的な言明は、基礎となるライセンスとは別に、独立した契約上の義務を生じさせる可能性があります。
商業上重要で、代替が困難であり、または市場代替の懸念を生じ得るコンテンツについては、ライセンスの取得が最も予測可能性の高い対応となる場合が少なくありません。ただし、生成AIの開発全般について、ライセンス取得が一律に法的要件となるわけではありません。
欧州連合(EU)域内で事業を行う企業、またはEU向けにサービスを提供する企業は、EU AI法(規則(EU)2024/1689)および関連する著作権規則についても検討する必要があります。同法第53条第1項(c)は、汎用AIモデルのすべての提供者に対し、EU著作権法を遵守するための方針を整備するよう求めています。この方針には、指令(EU)2019/790第4条第3項に基づく、テキスト・データ・マイニングに対する権利留保の特定および尊重が含まれなければなりません。また、第53条第1項(d)は、学習に使用したコンテンツについて「十分に詳細な概要」を一般に公開することを求めており、この概要は、AI Office(欧州AI局)が2025年7月24日に公表したテンプレートに従って作成する必要があります。これら二つの義務はいずれも2025年8月2日から適用されており、技術文書に関する義務とは異なり、オープンソースモデルの提供者にも適用されます。ただし、これらの規定は、データセットに含まれるすべての項目の開示や、データの完全な部品表(bill of materials)の作成まで求めるものではありません。
これら二つの義務はいずれも2025年8月2日から適用されており、技術文書に関する義務とは異なり、オープンソースモデルの提供者にも適用されます。ただし、これらの規定は、データセットに含まれるすべての項目の開示や、完全なデータ構成表(data bill of materials)の作成まで求めるものではありません。
2026年以降のAIコンテンツ戦略
企業は、著作権法がAIに関する包括的なルールをすでに整備していると考えるべきではありません。整備されていません。現時点では、著作者性、学習、データの取得方法、出力の挙動、契約、プライバシー、営業秘密、各法域固有の規制といった論点が、複数の領域に分かれたままです。また、学習とフェアユースについて、控訴裁判所による最初の判断もいまだ示されていません。したがって、法的に説明可能なAIコンテンツ戦略は、冒頭で示した三つの柱、すなわち著作者性、来歴、出力リスクを基盤とすべきです。これらを実務に落とし込むため、次の五つの目標を設定します。
- 人間による著作者性を確保する
著作権の帰属が問題となる場面では、人間による意味のある創作的関与を記録します。 - データの出所を把握する
主要なデータソース、適用される利用制限、ライセンス、既知の来歴上の不明点を特定できる記録を維持します。また、これらの制度が適用される場合には、カリフォルニア州およびEUの開示義務を満たせる水準の記録を備えます。 - 学習と出力を分けて分析する
入力データの適法性に加え、侵害的な出力、記憶された内容の再出力、既存著作物と実質的に類似する出力が生じる可能性も評価します。 - 契約の役割を現実的に捉える
利用規約、ライセンス、保証、補償条項などによって、当事者間のリスクを配分することは可能です。ただし、契約によって著作権を創り出すことも、第三者からの請求を排除することもできません。 - 導入前に管理体制を整備する
モデルテスト、出力制御措置、レビュー方針、苦情対応、ガバナンス記録を整備し、リスク管理を理念ではなく実際に機能する運用にします。
AI開発において、完全なデータ来歴の把握や一律のライセンス取得までが求められるわけではありません。しかし、組織は、どのようなデータを用いたか、どの権利または法的抗弁に依拠しているか、有害な出力を抑制するためにシステムをどのように設計しているか、そして残存するリスクがどこにあるかについて、説得力のある根拠と証拠をもって説明できる状態を整えておくべきです。
これらの問いを製品設計の中核的な課題として扱う組織は、紛争が生じてから対応しようとする組織よりも、変化する訴訟・規制環境に適切に対応できる立場に立てます。
ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、複雑な最先端のビジネス分野において、厳選されたクライアントをサポートするWeb3企業です。ダイナミックなビジネス環境で成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要な法務サービスを提供いたします。貴社のビジネスニーズについて、今すぐご相談ください。
法的に堅牢なAIコンテンツ戦略
論点 | 現行法 | 戦略上の含意 |
| 著作者性 | 著作権による保護には、人間による著作者性が必要である。AIが単独で生成したとされる著作物は、登録の対象とならない。 | 人間による意味のある創作的関与を確保し、その内容と過程を記録する。 |
| フェアユース | AI学習への利用が変容的利用に該当する場合もあり得るが、フェアユースの成否は事実関係に依存し、控訴裁判所の判断はまだ示されていない。 | データの取得方法、利用目的、市場への影響、ライセンスの有無・内容を総合的に評価する。 |
| 学習データ | 海賊版、利用制限のあるデータ、または記録が不十分なデータは、法的および商業的リスクを高める。 | リスクに応じた比例的な来歴・権利関係の記録を維持する。 |
| モデルの出力 | 侵害的な生成物に関する主張と、学習データの利用に関する主張は、関連するが法的には別個の論点である。 | 記憶内容の再現、逐語的な再出力、既存著作物との実質的類似性を検証する。 |
| 開示義務 | 包括的な連邦レベルの義務は存在しないが、カリフォルニア州法AB 2013およびEU AI法第53条が学習データの開示義務を課している。 | 適用される制度の下で、根拠をもって説明できる学習データの概要を準備する。 |
| 投資家・顧客によるデューデリジェンス | 専門性の高い取引相手は、AIガバナンスやデータの来歴について確認を求める傾向を強めている。 | 根拠のない保証ではなく、簡潔かつ監査可能な文書を準備する。 |
English


