Epic Games対Appleの戦いの最新の展開では、Appleが反訴してEpicに一撃を与えました。現在Appleは「堂々と認める形で契約上の義務に故意に違反し、冷血な「ホットフィックス」をローンチした」としてEpicを提訴しています。つまり、EpicがAppleのアプリ内購入の機能を回避したと言うのです。
反訴の中でAppleは、Epicのホットフィックスを「トロイアの木馬」と呼んで激しく非難しています。Epicが『フォートナイト』の13.40パッチを(Appleの開発チームの要請で)Appleのレビューのためにサブミットした時、そのビルドには新しい支払インターフェース、つまりデータをEpicのサーバーからアプリへ直接クエリしてインポートする「ホットフィックス」が含まれていましたが、その時点で、クエリ結果はAppleのアプリ内購入(以下「IAP」)をアプリ内購入の唯一の支払オプションとして表示していました。
提訴によれば、8月13日、「真夜中になって」EpicのCEOであるティム・スゥイーニー(Tim Sweeney)氏がAppleにメールで「今後、EpicはAppleの支払処理の制限には従わない」と言ってきたそうです。その朝、Epicは『フォートナイト』内の支払インターフェースに2種類のオプションが表示されるようにサーバーを変更しました。IAPとEpicの新しい直接支払いシステムです。Appleは、これはトロイアの木馬であり、「隠れた手数料窃盗の機能」を利用した「甚だしい窃盗行為」による契約違反だとしています。
Appleの反訴の第一訴因は契約違反で、ガイドラインおよびライセンス契約の特定項目の契約違反を指摘しています。
- Epicは意図的に「顧客をアプリ内購入以外の購入メカニズムに誘導し(誘導した)」、ガイドラインとAppleの明らかな反対意見に違反して、新しいストアフロントを作成した。
- EpicはAppleへ再度サブミットせずに変更を行ってライセンス契約に違反し、ストアまたはストアフロントをインストールし、アプリ内購入APIを使用しない購入を可能にし、App Store外の流通メカニズムを通じて追加機能を提供した。
- Epicはアプリの「機能、コンテンツ、サービス、または機能性を隠したり、誤解を招いたり、わかりにくくするような提供」をしないことをEpicに求めるライセンス契約に違反した。
さらにAppleは、契約条件としてEpicが30%の手数料を払わなければならないことになっており、金銭的賠償、懲罰的賠償、及び弁護士料を主張しています。Epicが直接支払システムを使えないようにし、また『フォートナイト』を含むすべてのアプリからAppleのIAPを削除させないようにするため、Appleが永久差し止めを求めているのも驚くにたりません。
反訴の裏付けとして、Appleは多くのページ数を割いて 、App Storeが基本的にいかに「顧客とデベロッパーにとって多大なギフト」であるかを説明しています。Appleは、デベロッパーへのサポートやユーザーのセキュリティーやプライバシー要件など、App Storeへの様々な投資例を挙げています。Appleは「App Storeとその背景となっているアイデアは、あらゆる想像の域を超えた成功を収めている」と述べています。Appleはさらに続けて、EpicはApp Storeのお陰で6億ドル以上もの収益を得たとしています。「Epicは現代のロビン・フッドのような企業を装っているが、実際にはApp Storeから得ている膨大な価値に対して何の対価も出したくないと考えている数十億ドル規模の企業だ」と主張します。それについて、AppleはIAPが消費者とデベロッパーにもたらす恩恵についても述べています。例えば、ユーザーとアプリの間の摩擦を減らせる(つまりユーザーが手軽に支払いできる)ことや、消費者は支払い情報を一度入力するだけでよく、複数のアプリごとに毎回入力する必要がないことなどです。そして、デベロッパーは、「175カ国の45種類の異なる通貨による取引を扱うための支払いインフラを設定する手間が省ける」ことで恩恵を受けられるとしています。
対するEpicの反応は、おそらく以前の論点を繰り返すだけになることでしょう。「Appleはかつて自らが非難した存在になってしまった。市場を支配し、競争を阻害し、革新を停滞させようとする巨獣だ」と言う主張です。Epicは当初から、Epicが違反したとAppleが主張する契約条項は、独占的で不法な条項であり、強制することはできない言っています。さらにEpicは、支払い処理方法としてのApp Storeを2.5%から3.5%の手数料を取るMastercardやVisaなどの他の大手クレジットカード会社と比較しています。これらのクレジット会社も支払者や受取人のためにセキュリティーやプライバシーなどのサポートサービスを提供しています。
しかし、AppleのApp Storeの条件をVisaの条件と比較するのは無理があるように思えます。単にAppleのサービス手数料がVisaよりも高いことが証明されるだけで、不利な取引を理由に契約違反をすることに対する法的基盤はないからです。
以前の投稿でも検討したように、Appleが独占しているかどうかが今回の案件の要になるのはそうした理由からです。それを決定するための市場の定義がその鍵になります。市場の定義が狭ければ、Appleは独占していることになります。この考え方には先例があります。今年の初めに、米国下院のデービッド・シシリーン(David Cicilline/D-RI)議員が「Appleは、自社の市場パワーで、ユーザーに30%の手数料を強制するか市場へのアクセスを拒否することで、法外な値段を吹っかけている」と言っているからです。
逆にこの定義をiPhoneだけでなく、すべてのスマホ市場にも拡大して、より広い範囲に当てはめれば、Epicの勝訴は考えにくくなります。Googleの方がAppleよりもずっと高い市場シェアを持っているからです。ある見積もりでは、Google Androidは世界市場のシェアの74.6%を占めているとされています。米国では、全スマホのモバイルオペレーティングシステムの50%がGoogle Androidだと見積もられています。サムソンは、モバイルオペレーティングデバイスの28%の見積もりなので、Appleのシェアはたった22%です。Appleは30%の手数料を取ると言うApp Storeモデルを発案したかも知れませんが、Googleはそれに習いやはり30%を要求しています。
この案件は新たな問題を生み出すようです。独占で訴えられている企業が、そもそも自分が支配している市場を生み出した企業だとしたらどうなるのでしょう。Appleは当然ながらApp Storeを100%独占しています。App Storeを所有しているのですから。しかし、Appleが独占禁止法を犯して独占していることを証明するのは、Epicにとって非常に厳しい戦いになります。Epicが敗訴すれば、懲罰的賠償と弁護士料も含めた損害賠償を請求して反訴したAppleにとって、賭け金がより高くなるのです。
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