Epic Games社がApple社を提訴したことで、Apple社のアプリ販売に課される15~30%の手数料、アプリ内課金、Apple社の広告に対する箝口令的な暗黙のルールに注目が集まっていますが、開発者や規制当局が注目しているハイテク企業はApple社だけではありません。また、Google社やValve社をはじめとするデジタル業界の巨大企業も、アプリ開発者に法外な料金を課すことで、市場の優位性を乱用していると非難されています。ゲーム・アプリ業界の大手企業による不正行為を抑制するため、3人の上院議員が「オープンアプリマーケット法案(Open Market Apps Act)」を提案しました。この法律が成立すると、アプリストアや開発者に対して深刻な影響を及ぼすことになります。
オープンアプリマーケット法案とは何か?
Epic社がGoogle社とApple社を相手に起こした訴訟では、アプリストアが自社のプラットフォームでの購入に対し多額の(多くの場合30%)手数料を取ることに加え、他の購入方法を事実上禁止していることが注目されました。多くの開発者やユーザーは、このような行為を反競争的で独占的な行為であると非難しています。
これを受けて、リチャード・ブルーメンタール上院議員(民主、コネティカット州)、マーシャ・ブラックバーン上院議員(共和、テネシー州)、エイミー・クロブチャー上院議員(民主、ミネソタ州)は、アプリ経済における競争を促進し、ゲートキーパーの力の弱小化を目的としたこの法案を公布しました。この超党派の法案が可決されれば、ユーザーの選択幅が広がり、サービスの質が向上するとともに、消費者のコスト削減にもつながるとスポンサーは述べています。もちろん、アップル社やグーグル社が自社のプラットフォーム上でのアプリ購入をコントロールする力も大きく削がれることになります。また、モバイルソフトウェアの流通形態も大きく変わる可能性があります。この法案は、2021年4月に上院の反トラスト委員会で行われた公聴会がルーツとなっています。Spotify、Tile、Match Groupの3社は連合体を主導し、AppleとGoogleによるアプリ内購入の制限や多額の手数料は、自社ビジネスに悪影響を与えていると主張していました。
この法案は、既存のプラットフォームホルダーが現行の料金を維持することを効果的に阻止し、コストと市場参入障壁を削減することから、独立系のゲーム開発者は、この法案を支持するでしょう。 独立系や小規模の開発者は、この法案によって、自社製品の認知度や収益性を制限するいくつかの問題に対処できると期待しています。例えば、両社の標準としている30%の手数料はあまりにも高く、イノベーションの妨げになっていると主張します。この法案が可決されれば、開発者はより多くの顧客を獲得し、より高い純利益を得ることができるため、有用な新アプリの開発を促進することができると考えています。
ビデオゲーム開発者にとってのオープンアプリマーケット法案とは?
この法律は、Epic社がApple社に対する訴訟で提示した多くの議論に具体的に対処しています。
- コミュニケーションの禁止
現在、アプリストアでは、開発者がプラットフォーム外での割引や別の購買方法を、ユーザーがアプリやメンバーシップ、ゲーム内コンテンツを購入する際に宣伝することはできません。これは、アプリ開発者に経済的な負担を強いるだけでなく、ユーザーにとっての有益な情報を奪うことになります。韓国で最近制定された法律と同様に、この法案 は、このような禁止措置を禁じ、ゲーム開発者が自分のウェブサイトに顧客を誘導することを認め、アプリストアの決済処理システムとその手数料を回避できるものです。 - 手数料と料金
同法では、引き続き自社サイトで取引された売上に対して、いくら課金するかをプラットフォームが決定できるようになっています。つまり、AppleやGoogle等のプラットフォームは、提供するサービスを評価するユーザーから収入を得ることができるのです。開発者は、純収益が減少するにもかかわらず、これらの既存のサイトでアプリケーションを提供し続け、その収益量を享受するようになるでしょう。しかし一方で、開発者は、自社サイトや割引プラットフォームなど自分たちが望む条件で、他のチャネルからもゲームを販売することもできます。 その際、大手アプリストアからの干渉を受けることはありません - サイドローディング
この法律では、ユーザーがApple StoreやGoogle Play Store以外から直接アプリをダウンロードすることが認められています。現在、Apple社は、ユーザーにセキュリティ上のリスクをもたらすとして、この行為を禁止しています。一方、Google社はサイドロードを認めていますが、「不必要に面倒で実用的ではないため、実際はユーザーが手数料を支払いプログラムをダウンロードすることを強要している」と非難されています。また、この法案では、ハイテク大企業がゲーム内での購入を 独自の決済システムで行うことを禁止する提案も含まれています。 - 訴訟の制限
コメンテーターによれば、この法案の最大の効果は、現在業界で横行している反トラストおよび反競争の争議について、連邦政府の司法部門ではなく、立法部門に最終決定権を与えることにあるとされています。包括的で適用しやすい基準を設けることで、連邦裁判所で乱立している訴訟を一掃することができるでしょう。
この法案には賛成派が多い一方で、反対派も多く存在します。業界団体「Chamber of Progress」は、消費者がアプリストアやモバイル機器に求める安全性、信頼性、利便性が損なわれるという理由で、この法案を批判しています。さらに、一部の専門家は、この法案が全面的に効果を奏す手段を欠いていると懸念を示しています。この法案の第4条では、ユーザーのプライバシー保護や不正行為の防止のために、アプリストアでの支払いや配信を必要とするゲートキーパーが免除されているためです。
この法案が成立すれば、ビデオゲーム開発者や新世代の起業家たちは、支配的プラットフォームからのパワーバランスを変えることができるようになります。特に、独立系のビデオゲーム開発者にとっては、コストの効率化や製品の収益化の新たな機会を得ることができるため、大きなメリットがあると考えられます。自社製品を市場に投入しようとしている、あるいは製品開発段階にあるアプリケーション開発者は、経験豊富な弁護士に相談し、本法が成立した場合に自社がどのような利益を得られるかを確認する必要があるでしょう。同様に、プラットフォーム側も、経済的な被害を軽減しつつ、規定を確実に遵守するために、弁護士に相談することをお勧めします。
ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、最先端のビジネス分野で選ばれたクライアントをサポートする法律事務所です。複雑でダイナミックなビジネス環境で成功するために必要なサポートを提供し、イノベーションの限界を広げ、米国国内及び国際ビジネス目標を達成することを目指しています。あなたのビジネスニーズについて、今すぐお問い合わせください。