デジタル資産がより現実に: 英国が暗号通貨とNFTの新たな法的分類を提案
https://gammalaw.com/wp-content/uploads/2023/09/08.2023.UK_DigitalAssets.1000px.jpg 1000 648 Yusuke Hisashi Yusuke Hisashi https://gammalaw.com/wp-content/uploads/2023/01/cropped-circle_Yusuke.v2-3-96x96.pngデジタル資産の進化に対応するため、英国法律委員会(UKLC)は、暗号通貨やその他のデジタル資産に特化した新しい個人資産のカテゴリーを提案しました。Web3技術を採用する企業やプラットフォームは、この法案が自社の業務にどのような影響を与えるか、また、米国でも同様の法的取り組みが必要かどうかを理解し、検討する必要があります。
英国政府からの要請に基づいて作成された英国法律委員会の報告書は、従来の私有財産の分類に異議を唱えています。従来の分類方法では、財産を 「所有物(things in possession: 不動産のような有形資産) 」とするもの、および、「訴訟により実現可能な財産(thing in action:債務や株式などの無形権利)」に分類されています。しかしこの報告書は、既存の法的定義では、暗号通貨やNFTなどを含むデジタル資産の独自の特徴を適切に捉えられていないと述べています。
この課題に対処するため、英国法律委員会は、「デジタル・オブジェクト」 という第3のカテゴリーの導入を提言しています。これは、暗号通貨から、炭素排出権や輸出割当のようなデジタル化された証券に至るまで、広範なデジタル資産の法的枠組みとして機能することになります。こうした多様な資産を包括的に取り扱うことによって、デジタル資産という多面的な世界を認識する上での同委員会の微妙なアプローチが明らかになります。
英国法律委員会は、デジタル資産から生じる複雑な法的問題について裁判所に助言するための専門家パネルを設置することを提案しました。この背後にある目的は、このような新しい形態の財産に関わる事案を有効に判断するために必要な専門知識を司法に提供することです。
また、この提案は、英国を暗号資産の世界的な中心地として位置づけることを意図しています。この目標は、2022年4月にリシ・スナック英国首相が表明した構想と一致しており、デジタル資産領域でイノベーションを促進するという英国のコミットメントを強調しています。
暗号通貨企業への影響
この法案が成立すれば、デジタル資産を扱う暗号通貨事業者や新興テック企業は、英国内で事業を行うための特定のライセンスを取得することが義務付けられるでしょう。こうした動きにより、暗号通貨の法的地位が正式に確立され、暗号通貨は金融資産や証券の一種として分類されることになります。その結果、規制当局による監視が強化される可能性があるため、当該業界の企業は、自社の業務、コンプライアンス、リスク管理戦略を適応させる必要があると思われます。
さらに、この法案は大きな税務上の影響も伴います。英国法律委員会の報告書は、暗号資産に関する自己申告書の修正について言及しています。これにより、2025-26会計年度以降、英国市民や企業は、新たにデジタル資産の申告を求められることになります。英国財務省は、この新しい税目からの予想収益については、具体的な数字を提示していません。この動向によって、デジタル資産を扱う個人や企業は、財務報告や税務計画戦略を変更する必要があるかもしれません。
一方、この法案が可決されることによって、暗号通貨セクターの重要な目標の一つである新技術やビジネスモデルの開発に適したエコシステムが構築されることが予想されます。これにより、こうした資産の存在と英国経済への貢献のみでなく、そのユニークな性質も認識されるでしょう。さらに、暗号通貨やその他のデジタル資産を規制する法律の公正な適用を確保する司法諮問委員会の設置も提案されています。
新たな規則への理解が深まり公平な競争の場が保証されることで、投資リスクが軽減され、投資家の信頼が向上し、さらに、デジタル資産を基盤とするプロジェクトへの資金調達が促進されるでしょう。ベンチャーキャピタルのみでなく、従来の銀行、企業パートナー、政府機関も、共同開発や ジョイントベンチャーに関心を寄せ、ブロックチェーンの成熟を促進するベンチマークが確立されるでしょう。
米国は追随すべきか?
2022年、米国はデジタル資産取引がもたらすユニークな特性と課題に対処するための措置を講じました。米国の商取引に関する包括的な法律である統一商事法典(UCC)は、統一法委員会(ULC)と米国法律協会(ALI)の合同委員会によって改正されました。この改正により、暗号通貨は電子マネーのカテゴリーから除外され、「コントローラブル・エレクトロニック・レコード(CER:管理可能な電子記録)」という概念が導入されました。
CERは 「電子媒体に保存された記録 」と定義されています。この広範な定義は、既存のブロックチェーンに裏付けられている資産だけでなく、次世代のデジタル資産も包括的に対象としています。これには、暗号資産やNFTなども含まれ、現代経済におけるデジタル資産の多様な性質が認識されています。統一商事法典にこのような改正があった背景には、ワイオミング州、ケンタッキー州、アイダホ州、テネシー州などの複数の州が、デジタル資産における権利を定義し、規制するための法令を可決したことがあります。州法の違いがあるものの、ほとんどの州議会は、それぞれのタイムラインで、統一商事法典の改正案を採用する見通しです。
こうした動きを考慮すると、米国がデジタル資産に別のカテゴリーを導入する必要はないのではないかという意見もあります。そうした措置は、デジタル経済の成長を促すどころか、むしろ阻害する可能性があると主張するものです。既存の法体系は、デジタル資産に対応するのに十分な柔軟性を実証してきたという考え方が広く浸透しています。裁判所は数年にわたり、「価値のあるデジタル資産」に所有権を付与することに成功し、多くのデジタル資産関連分野で一定の確実性を確立しました。いまだグレーな領域や不確実な側面は存在するものの、これらは非常に複雑で微妙な問題であり、効果的な解決には特定の専門知識が必要です。米国議会がデジタル資産に新カテゴリーを導入することを決議した場合、限定的な法改正のみを実施することが望ましいという見方が有力です。これは、法的環境を大幅に混乱させることなく、コモンローが不足しうるギャップを埋めるように設計されるべきという見解です。
十分な情報に基づいた意思決定を確保するため、業界の専門家からなるパネルを設置することも賢明かもしれません。このパネルは、拘束力のないガイダンスを提供し、デジタル資産規制の複雑さを克服するのに役立つでしょう。このような専門家主導のアプローチは、明確な規制の必要性と、デジタル経済のイノベーションを促進する重要性とのバランスをとるのに役立つ可能性があります。
結論
進化し続けるデジタル資産の状況を踏まえ、世界各国は法規制の枠組みを見直す必要に迫られています。「デジタル・オブジェクト」の分類を導入するという英国法律委員会の提案は、デジタル資産の独自の特性を認識し、それらを組み込むために法律を適応させる点で重要な一歩となります。
英国とは対照的に、米国では、デジタル資産に関する包括的な規制と執行の枠組みがまだ確立されていません。したがって、現時点では、米国のデジタル資産市場に参加するには、証券、商品、その他を問わず、関連する取引の規制状況を慎重に検討する必要があります。この課題は、国際的な規制措置の乖離によってさらに複雑化しており、デジタル資産を取り巻く複数法域の取引を慎重に分析することが求められています。
デジタル経済を強化するために、米国は暗号通貨とデジタル資産に関する強固な規制を必要としています。解決策の一つは、英国の取り組みを模倣し、限定的な法改正によってデジタル資産に独立したカテゴリーを導入することかもしれません。すでにいくつかの州がこれらの資産の法的地位について議論していることからも、このような取り組みによって、米国はデジタル資産のハブとして国を位置づけることができるかもしれません。
デジタル資産をめぐる法整備が進む中、関係者は、常に情報を入手し、それに応じて戦略を適応させる必要があります。そうすることで、このダイナミックで複雑な市場におけるコンプライアンスと業務の最適化を確保することができます。Web3テクノロジーは複雑で常に進化していることから、法的リスクが生じる可能性があります。経験豊富なWeb3専門弁護士は、このようなリスクを特定し、軽減する戦略を考案することで、クライアントの利益を保護し、規制へのコンプライアンスを確保することができます。
ガンマ法律事務所は、サンフランシスコを拠点とし、複雑な最先端のビジネス分野において、厳選されたクライアントをサポートするWeb3企業です。ダイナミックなビジネス環境で成功し、イノベーションの限界を押し広げ、米国内外でビジネス目標を達成するために必要な法務サービスを提供いたします。貴社のビジネスニーズについて、今すぐご相談ください。