Epic Gamesが5億ドルを費やし、児童オンラインプライバシー保護と不正販売戦略に関して学んだ教訓は、マイクロトランザクションの促進やユーザーデータの活用を検討しているプラットフォームに対する早期警告となるでしょう。
リナ・カーン(Lina Kahn) 連邦取引委員会(FTC)委員長が消費者保護に対して一層積極的な姿勢を示していることから、ビデオゲーム開発者、メタバース設計者、拡張現実プロデューサー等のデジタルメディア関係者は、自社のメディアプラットフォームが、児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)、EU 一般データ保護規則(GDPR)など最も厳しいグローバル規制に準拠しているかを確認することが望ましいでしょう。
Epic Gamesは、同社の人気フランチャイズ「フォートナイト」に関する2件の苦情に和解するため、FTCが規則違反で徴収した最高額の制裁金となる5億2000万ドルを支払うことになりました。FTCは、フォートナイトが13歳未満のプレイヤーのプライバシーを侵害したことを明らかにしました。COPPA違反として、フォートナイトが保護者の同意を得ずに若年プレイヤーの個人情報を収集したと主張しています。COPPAの規則では、企業は収集するデータとその取得方法について、保護者に明確な通知を行うことが義務付けられています。また、FTCは、デフォルトで有効になっている同ゲームのチャットおよび音声通信機能の一部が、オンラインいじめ、ハラスメント、自傷行為や性的行為に関する成人プレイヤーとの会話に青少年をさらしたとしています。
2つ目の罰金は、フォートナイトがプレイヤーを騙して意図しない買い物をさせるように設計された「ダークパターン」を内蔵していることをFTCが発見したことによる制裁です。FTCによれば、これらのダークパターンは、「直感に反し、一貫性がなく、混乱を招くボタン設定」からなり、プレーヤーが誤って、あるいは課金内容を十分に理解せずに発注するよう誘導していたといいます。例えば、スリープモードから起動させようとしたり、商品のプレビューを試みた際に、無作為にボタンを押しただけで、注文されたケースもありました。このようなダークパターンは、多くのリテールの現場でよく見られるもので、混乱した消費者を月額制サービスに加入させたり、新しく購入したラップトップの保険を購入させたり、不要なソフトウェアのダウンロードや、スキン、武器、リソース、その他のゲーム資産を購入させたりすることがあります。フォートナイトは、宣伝材料をニュースコンテンツとして提示し、購買を促す「ステルス広告」でも告発されています。
未成年者を収益の一部とするウェブサイト、ゲーム、ブランドは、児童を対象としたマーケティングにはさらなる責任が伴うことを理解する必要があります。このケースは、以下のようないくつかの点を強調しています:
- これは、FTCをはじめとする米国および欧州の規制当局が、ゲームやオンラインコンテンツを初め、特に児童、 ギャンブル依存症の人、高齢者といった弱者を利用しかねない製品やサービスに対して、より積極的な規制を行うことの正当性を与える材料となります。リナ・カーン氏の率いるFTCは最近、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザードの買収に反対するなど、業界の大手企業を相手にしています。英国のオンライン安全法案は、サイトや検索エンジンに対し、ユーザーが作成したコンテンツを厳格に評価し、違法または有害なものを削除するよう求めています。
- 同様に、この事例は、これらのサービスに対して、データ・セキュリティとプライバシーの安全対策は強固でなければならないという通告となるものです。ここでは、Epic gamesのゲーム内チャットおよび音声通信システムによって、子どもたちがいじめやハラスメントを受けたり、セクシュアリティや自殺、薬物乱用、その他の有害な行動に関する不適切な会話にさらされることが起こりやすいようになっていました。音声やチャット機能はデフォルトでオンになっており、大人が未成年のプレイヤーに入り込んで通信することを防ぐためのフィルタリング機能はありませんでした。最近成立したカリフォルニア州法(カリフォルニア年齢適正デザインコード法:California Age Appropriate Design Code)では、この問題に対処するために、2024年から、児童のアカウントをデフォルトで最高のプライバシー設定にすることを企業に義務付けることになりました。
- オンラインゲームやホストサイトは消費者からの苦情を、より真摯に調査しなければならないことを示しています。今回のケースでは、Epic gamesは100万件以上の苦情と、アカウントが不正に課金されているという懸念の声を従業員から受け取っていました。しかし同社は、迅速な返金を行う代わりに、返金申請を意図的に難しくし、苦情を言った人のアカウントをロックし、今後の課金に異議を唱えた場合はプレイヤーを追放すると脅したとされています。
モバイルアプリ、ゲームプラットフォーム、ソーシャルメディア・サイト、メディア企業は、Epic gamesのケースを踏まえて収益戦略を再検討し、自社のポリシーが視聴者や年齢に適したものであるだけでなく、自社のパートナー、ユーザー、ホストが責任を持ってデータを収集・使用できるようにする必要があります。インフルエンサー・マーケティングエージェンシーであるWhalarの最高マーケティング責任者、Jamie Gutfreund氏はCampaign USに、これは大きな要求であると語りました。
「児童向けマーケティングには専門知識が必要ですが、社内にそのような能力があるように思えません。ブランドは、その要件を管理するために…専門家と提携する必要があります」と述べています。
「消費者保護の最前線に立ち、プレイヤーに最高の体験を提供するために、罰金の支払いに同意しました。ビデオゲーム業界は、プレイヤーの期待値が高く、新しいアイディアが最優先される、変化の激しいイノベーションの場です。数十年前に制定された法令には、ゲームのエコシステムがどのように運営されるべきかは規定されていません。法律は変わっていないものの、その適用は進化しており、長年の業界慣行ではもはや十分ではありません。」とEpic gamesはコメントしています。
このように業界は進化し、現実世界の規制がデジタル空間に適用できないことから、新興テクノロジー企業は、経験豊富なビデオゲームおよびデジタルメディア専門弁護士に相談し、オンラインプライバシー方針、使用許諾契約等の契約、データセキュリティ対策を見直す必要があることが浮き彫りになっています。インターネットは国際的なものであるため、最も厳しい要件を遵守し、個々の消費者データに基づくマスカスタマイゼーションを必要としないマーケティングプランを採用することも戦術のひとつです。Epic gamesは、FTCとの和解の発表の中で、「ゲーム開発者は、COPPAについて熟知しているかもしれませんが、そのグローバルな適用については認識していないかもしれません。COPPAは、世界中で児童プライバシーに対処する数多くの規制のひとつに過ぎず、その対象は10代の若者にも広がっています。つまり、ゲーム開発者は児童プライバシー保護を18歳未満のプレイヤーにまで拡大する必要があるのです。」と述べています。
経験豊富な法律事務所は、顧客や従業員のデータを収集、保存、処理、販売、または使用するあらゆる分野の企業を支援し、法的リスクと潜在的損害を最小限に抑えることができます。ビデオゲーム開発者、メタバースプラットフォーム、拡張現実プロデューサー、その他のエンターテイメントおよびコミュニケーション企業は、このデータを活用する機会が最も多い企業と言えるでしょう。そして、FTCや世界中の規制当局が日々確認しているように、マイクロトランザクション、戦利品ボックス、データセキュリティ、モバイル化に関しては、従事する企業はしばしば監視下に置かれているのです。
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