非代替性トークン(NFT)は数百万ドル規模の市場を形成しており、2022年夏の低迷はあるものの、その可能性には無限大に見えます。NFTの中には数百万ドルで取引され、一夜にしてクリエイターをリッチにするものもありますが、ほとんどのNFTはもっと安値で取引されています。ブルームバーグは、平均的なNFTは2,000ドル弱で購入できると見積もっています。NFTは必ずしも今や「一攫千金」を狙えるものではないにせよ、ブランドオーナー、アーティスト、ミンターには大きな収入源となり得るものです。企業はNFTを利用して、自社の製品、イベント、ブランドをより効果的に宣伝することができます。NFTは、もはやデジタルアート・コレクターやビデオゲーマーだけのものではなく、エンターテインメント、音楽、eスポーツなど、他のコレクターズスペースにも広がってきています。しかし、このNFTの急速な拡大は、一部の参加者に成長痛をもたらしました。G2 Esportsが最近気付いたように、パートナー関係を結ぶ相手を誤ったり、各当事者の権利と責任に包括的に対処しなければ、必ず問題が発生するのです。
取引が横道へそれるとき:G2 Esports vs. Bondly
2022年3月、G2 Esportsは知的財産権の侵害を主張し、Bondlyに対し損害賠償を求める訴訟をロサンゼルス高等裁判所に起こしました。G2は、Bondlyが、同社および同社がスポンサーを務めるeスポーツチームに関連するG2 Esportsの知的財産に基づく一連のNFTを開発・宣伝する契約に違反したと主張しています。
原告は、欧州のeスポーツ・エンターテインメント企業で、業界を代表するブランドと選手を集め、リーグ・オブ・レジェンド、Valorant、 Counter-Strike: Global Offensive、ハースストーン、ロケットリーグ、レインボーシックス シージ、iRacingの各eスポーツリーグを運営しています。一方、被告のBondly(その後Forjにブランド名変更)は、音楽、エンターテインメント、ゲーム、収集品に基づくNFTを作成し、ブロックチェーンのエコシステムを支える一連の製品・サービスを管理するブロックチェーン技術企業です。
訴訟の中でG2は、BondlyがNFT作成能力について同社幹部に誤解を与え、納品物や支払いに関する重要な期限を逃したと主張しています。両者は2021年6月に2年間の独占契約を締結し、BondlyはG2 EsportsのためにNFTを開発し、その代理人およびプロモーターとして活動することに合意しました。その対価として、BondlyはG2に対して知的財産権に関する一連の手数料を支払い、NFTの販売を通じてそれを回収する予定でした。
この契約により、BondlyはG2 Esportの画像、ビデオ、オーディオファイルなどの知的財産にアクセスすることができるようになりました。G2がBondlyに最初の権利料の請求書を送った直後、Bondlyが約束通りにNFTを納品できないことが分かったと述べています。契約書に記載された特定の納品物や作業について、誰が責任を持つかについて、当事者間で合意が得られていなかったのです。その後、Bondlyは、G2が妥協しないことを理由に、契約を打ち切ろうとしました。G2は、NFTの未払いおよび未提供を理由に契約違反を主張し、2年分の年間権利料200万ドルと、合意していた前金保証額125万ドルの合計525万ドルを求めて提訴しました。この事例は、ライセンス、販売、その他の権利と責任が契約で明確に定義されていない場合の、NFTパートナーシップをめぐって起こりうる問題を浮き彫りにしています。
Web 3.0 パートナーシップ
G2 Esports vs.Bondly のケースは、Web 3.0 の世界でのパートナーシップにおいて考慮すべき重要な点を明示するものです。Web 3.0は、エコシステムに補完的なスキルやリソースをもたらす多様なプレーヤー間のコラボレーションなしには実現しません。NFT構築のパートナーシップ契約では、パートナーシップを円滑に進めるために、権利、責任、その他の適切事項をを明確にする必要があります。NFTの契約を締結する際には、下記のような検討事項を網羅することが推奨されます。
知的財産権 – NFTは、著作権保護や意匠特許権の対象となる知的財産とみなされるべきものです。NFT作成者は、その基盤となる資産の著作権を保持することを販売契約書に明記することが少なくありません。NFTの著作権は創作された時点で存在しており、NFTの売却時に著作所有権が譲渡されるとは限りません。
商標権の拡張 – ブランドオーナーは、将来発生するかもしれない技術やメディアに備えた用途も対象として、商標権を拡張する必要があります。これを明記することによって、所有者はNFTやその他の製品画像のデジタル使用の権利を保留できることになります。ナイキやエルメスを含むいくつかの有名ブランドは、法廷でブランドの自律性を主張することを余儀なくされ、この教訓を身をもって学びました。
ロイヤリティ– NFTには著作権が付与されているため、クリエイターはその使用を管理するスマートコントラクトでロイヤリティの支払いを指定することができます。NFTが販売されるごとに、クリエイターはその販売額の一部を将来にわたって受け取ることができます。NFTの所有者も、販売価格の一部を受け取ることができます。
ライセンス – NFTの購入者は、ライセンス供与、知的財産、デジタル技術に精通した弁護士に依頼し、著作権保護されたコンテンツの複製に関する条項を含むライセンスを検討する必要があります。ほとんどのNFTライセンスは、購入者にNFTの使用、複製および表示に関する限定的な権限を与えるにすぎません。通常、派生コンテンツを作成したり、製品や企業のマーケティングにNFTを使用したりして、NFTを商業化することはできません。そのような意図がある場合、買い手はそのような権利について交渉し、その特権のために追加料金を支払う用意をしておく必要があります。Bored Ape Yacht ClubやCryptokittiesの成功により、こうした権利の拡大が一般化しつつあるのです。
意匠特許 – ブランドオーナーは、現在および将来の意匠特許が模倣品や侵害からどのように自社利益を守ることができるかを熟知し、自社資産を保護し、権利を行使し、損害を回復する方法を知っておく必要があります。NFTは、その真正性を検証するためのブロックチェーン上のユニークな「フィンガープリント」によって、複製することはできませんが、再生産することは可能です。
有価証券指定 – 証券取引委員会は現在、NFTを証券と見なしていませんが、規制当局の間ではこの方針を見直す動きが広がっています。証券取引委員会が、NFTが他人の努力による潜在的利益に基づいて販売されていると判断した場合、「Howeyテスト」の要件が満たされ、投資契約と分類されるかもしれません。さらに、NFTの分数化により、NFTが未登録の証券とみなされ、それに応じて規制や課税が行われる可能性があることも、念頭に置く必要があります。
個人情報 – いくつかの有名な情報漏えい事件が発生したことで、データセキュリティは世間の注目を集め、米国、欧州、アジアの各国政府は、より高度な保護を義務付ける措置を講じました。これらの法律は、NFTにも適用される可能性があります。NFT契約には個人情報保護方針を盛り込み、NFTに機密データが含まれないこと、または含まれる場合はそのセキュリティがどのように確保されるかを確認する必要があります。
NFTとブロックチェーンを取り巻く法規則はいまだ進化しているため、Web 3.0におけるパートナーシップは、いずれ法律が新技術に追いつくのに合わせて適応していかなければならないでしょう。訴訟を回避するため、NFT契約では、パートナーシップにおける各当事者の権利、マーケティング担当者、NFT販売プラットフォーム、使用するブロックチェーンに加え、知的財産や受動的収入源についても検討する必要があります。G2 Esportsに起こったような不適切なコラボレーションの選択を避けたい企業は、落とし穴が潜んでいるかもしれないことを理解し、それに応じて計画することが重要です。ブロックチェーン/NFT分野を専門とし、契約法に精通した弁護士に相談することで、有益な結果が得られるかもしれません。
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