PASPA無効化がスポーツ賭博に及ぼす影響

PASPA無効化がスポーツ賭博に及ぼす影響

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PASPA無効化がスポーツ賭博に及ぼす影響

1000 648 David Hoppe

合衆国最高裁判所が、州によるスポーツ賭博の許可(ネバダ州を除く)を違法であるとした『プロ・アマスポーツ保護法(PASPA)』(1992年成立)に対して無効の判決を出してから3年近くが経ちました。全米の国内ブックメーカー、リアルマネーゲームの運営組織や収入を増やしたい州議会、そして賭博参加者は、『Murphy v. National Collegiate Athletic Association (マーフィー対全米大学体育協会)』裁判事件に対する裁判所の判決が、賭博機会の幅を広げることに大きな期待を寄せていました。

時間の経過とともにこの件も多少は落ち着いてきたこともあり、20185月のPASPA無効化が米国におけるスポーツ賭博、そしてその他の賭博に及ぼした影響と将来この案件が先例としてどのように適用されるかについて検討したいと思います。

PASPAの歴史と無効化

最高裁判所の判決は、各州がスポーツ賭博を合法化することを阻害したのは違憲であり、PASPAによる連邦政府への越権行為だとしています。PASPAは、シーズン中毎日続くファンタジーリーグも含め、州の法律や合意に準じて州がスポーツ賭博を後援、運営、宣伝、促進、ライセンスまたは法令により許可すること、および民間の個人が同様の行為を行うことを違法としています。

裁判所は、議会が州に対して法律制定を強要できないことを定めた憲法修正第10条の「反徴用原則」にPASPAが反していると裁決しました。ニュージャージー州は、州内のアトランティックシティのカジノにおけるスポーツ賭博を合法化しようとしており、マーフィー判決はそうした長期的な試みの集大成となりました。2011年に実施された拘束力のない市民投票で、ニュージャージー州の住民は、スポーツ賭博に賛成するとの結果が出ました。

マーフィー判決は、全米のスポーツ賭博の状況を劇的に変えると思われます。マーフィー判決後、米国の賭博収入は今後3年から5年で、58億ドルに達すると見積もられています。

PASPA無効化後の法制定の展開 

裁判所が賭博を支援する判決を出すことを期待した、デラウェア州、ウエストバージニア州、ミシシッピー州やニュージャージー州等は、PASPA判決が発表される前に、合法的なスポーツ賭博の準備を始めていました。これら以外の複数の州でも、この判決後、同様の法律を制定しました。20211月時点で、7州を除くすべての州が何らかの形でのスポーツ賭博を合法化する準備を進めています。SportsHandleは、すでにスポーツ賭博が行われている州や合法であるが、まだ実施されていない州、法律が保留になっている州を追跡しています。

州を越えた賭博に対するPASPAの影響

PASPA無効化により、州がその州内においてスポーツ賭博を合法化できるようにはなりましたが、1961年の通信法では州の境界を超えたスポーツ賭博は、いまだに違法と見なされています。通信法の通商条約では、インターネットを含む有線通信を利用して、州の境界または米国国境を超えた賭博の参加やサポートを禁止しています。スポーツ賭博の運営組織が使用するサーバーやその他の技術設備も同州内になければなりません。つまり、すべての賭博は、賭博活動が合法とされている州内で開始され、受領され、承認され、処理される必要があるのです。

そのため現状では、オンラインでのスポーツブックは、そのブックがある州の住民またはその州への訪問者のみがオンラインスポーツブックに参加することが可能です。ゲーミングの運営組織と取締当局は、ジオロケーション技術を利用して、その時点で物理的に州内に位置している電話またはコンピューターから賭博が行われたことを確認できます。

もちろん、携帯電話のシグナルは、ある州から発信され最終的にその州内で終了するとしても、異なる州の中継塔間を行き来することがあり得ます。また、情報スーパーハイウェイは、州の境界線とは関係なく、最速経路でデータをやりとりするために州間を通過することもあり、賭博やギャンブル関連の情報を含む情報パケットが、賭博が開始され受領された州に戻される前に、瞬間的に州を超えて移動することはあり得ます。そのような中間経路(技術的には「エラントエレクトロン」問題と言われる)が通信法に違反するかどうかは明確ではなく、その解釈は州によって異なります。

PASPA無効化によるその他の影響

2018年のPASPA無効化に続き、司法省は通信法を再解釈し、通信法は州を越えたすべての賭博を禁止するものであるとの結論を出しました。規則制定の再解釈にオンラインロッタリーが含まれたため、オンラインのチケット販売で恒常的な収入を得ていた複数の州は大きな打撃を受けました。司法省の裁定は、通信法の規定がスポーツ賭博だけに適用するという、2011年の正式発表を上回る結論を出した形になります。オンラインロッタリー、ポーカー、キノ、ビンゴ、スロット、その他のカジノゲームの運営やライセンスを実施している州は、司法省の決定に異議を唱えました。

2018年の司法省の決定に基づけば、チェスやバックギャモンなどのスキルベースのゲームは、通信法では許可されており、それを許可して規制化するかどうかは州の判断によります。それでも、スキルベースのゲームに賭けることの合法性、そしてその行為にスキルが必要なのかどうかについては意見が分かれています例えば、チェスに賭けるのはフロリダ州では違法ですが、完全に運に左右されるロッタリー、キノ、そしてスロットは、オフショアのカジノのウェブサイトにログインできれば、ほとんどの米国市民が利用できます。ポーカーのようなある程度のスキルが絡むオンラインゲームの合法状態に関しては明確ではありませんが、州内のプレイヤーであればオンラインポーカーが合法性とされている州は5つあります(ニュージャージー、ネバダ、ペンシルバニア、ウエストバージニア、デラウェアの5州)。多くの州が司法省の裁定に異議を唱えており、近い将来オンラインポーカーを合法化する可能性もあるため、この状況は変化するかも知れません。

結論

オンラインスポーツ賭博をめぐる法的環境は、連邦政府と州政府の法律が統一していないため、依然として複雑な状態です。州の境界線を越える賭博と中間経路の場合は、規制が流動的なために常時監視が必要で、特に複雑と言えます。通信法が現在も有効であるため、オンラインスポーツ運営組織とスポーツブックは、特に州の境界線を越える賭博に慎重になり、非居住者からの賭けを受領しないようにしなければなりません。「中間経路」の合法性が明確でないため、これらの分野に経験の深い弁護士に相談することが最善の方法です。

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David Hoppe

All stories by: David Hoppe